直感的な発生原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 14:54 UTC 版)
振れ回り運動(自転する物体が自転軸と直交する軸について自転軸を振る回転運動)をしている物体には、自転軸と振れ回り軸それぞれに直交する軸のモーメントが働いている。 Ω × L = T {\displaystyle {\boldsymbol {\Omega }}\times \mathbf {L} =\mathbf {T} } Ωは振れ回りの回転速度、Lは自転軸角運動量、Tは振れ回りによって発生するモーメント、-Tがジャイロモーメントである。ジャイロモーメントと振れ回り速度が対をなす点に注意(外力モーメントによって単純に自転角速度を増すだけのときにモーメントと釣り合うのは角加速度である)。 この力は転向力(コリオリ力、運動量を旋回させるために要請される力)を角運動量の旋回に拡張したものである(コリオリ力は2ω×pで与えられる)。ここでは直感的に把握し易いよう、質点の動きについてみたときの原理を述べる。 例として、壁にかけるような単純な形のアナログ時計で、針の先端に大質量の錘が付いたものを考える。(針の回転は連続的であり、針自体は運動に影響しない程度に微小変形する。諸部品の重量は無視できるとする)。正常姿勢で作動する時計を上空から見て時計回りに一定速度で振れ回りさせる(したがって振れ回りの角速度ベクトル及び軸は時計の中心を通り、文字盤の6時を指す方向となる)。 錘の運動は盤面に沿うため、その運動量の水平方向成分に応じてコリオリ力が働く。針が文字盤の12時から3時へ向かうとき,針についた錘は振回軸から遠ざかる。このときに振れ回り回転速度が維持されるには運動量(ただし盤面に直交する方向の成分である)増加が必要だが実際には果たされない。結果として振回を遅らせる方向の力を生む。針は盤面へ近づく向きに僅かに変形する。3時から6時へ向かう間は逆に錘が振回り軸へと近づくため余剰となる運動量を吐き出し振れ回りを速める力を生み、針は盤面から遠ざかる方へと変形する。6時から9時の間は12時→3時と同様に振回を遅らせる力であるが、盤面から遠ざかる方向に変形。9時から12時の間は3時→6時と同様に振回を速める力で盤面へ近づく方向に変形する。整理すると9時から3時の間(時計の上半分)では盤へと近づく方向、3時から9時(下半分)では盤から遠ざかる方向の力が針へと加わる。これは即ち盤中心から9時を向く方向のモーメントの発生を意味する。 この時計の9時方向のモーメントと釣り合う逆方向(3時方向)モーメント T が外部から加わっていることを示すのが前述のベクトル式である。振回運動を維持する限り常に働いている。外部モーメント T が失われると、自己のモーメントにより新たな振れ回り(この例では振れ回りする掛時計の文字盤の9時方向)が発生し、これは最初の振回(6時方向)を止める向きのモーメントを生み平衡状態に至る結果、振れ回り運動は消失する。従って、ジャイロに外部から自転軸以外の軸についてのモーメントを与えることは、他の2軸についての振回-直交モーメントの平衡を崩すことに等しい。 また、現実の回転体はかならず自転軸方向の厚みがあるため、遠心力の不均衡によるモーメントも同時に発生する。これは、自転と振回りそれぞれの周速度が相殺する部分と相和する部分があるためで、上記のコリオリ力によるモーメントと同じ方向のモーメントとなる。旋回半径が十分大きい場合はモーメントの大きさも同水準となる。
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