盗撮行為の適用除外規定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:27 UTC 版)
「映画の盗撮の防止に関する法律」の記事における「盗撮行為の適用除外規定」の解説
ただし、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日(以下、最初の有料上映開始日)から起算して8か月を経過した後の盗撮に対しては、4条1項の規定は適用しない(4条2項)。したがって、当該行為には著作権法30条1項適用の余地が残され、著作権侵害が成立しない可能性がある。盗撮の禁止期間を最初の有料上映開始日から8か月に限定した理由は、私人に対する過度な規制を回避するとともに、日本における新作映画の上映期間の多くが8か月であるという実情を考慮したものである。 最初の有料上映開始日から8か月の期間内であることは盗撮(2条3号)の要件ではなく、著作権法30条1項の適用除外(4条1項)の要件としている。このことは、最初の有料上映開始日から8か月が経過すれば、著作権法30条1項の適用除外がなくなる一方で、3条が定める盗撮防止のための努力義務は引き続き関係事業者に課されることを意味する。この努力義務は映画館等における映画の録画・録音行為が盗撮の要件(2条3号)を満たさなくなるまで、すなわち、保護期間の満了やその他の事由によって著作権が消滅するまで課されることになる(2条3号かっこ書)。 以上のように、本法律4条1項は、私的使用を目的とした複製(私的複製)は自由であることを原則とする著作権法30条1項に例外を設ける特別規定である。私的複製の自由を制限する立法例は初ではなく、既に、公衆用自動複製機器による複製(著作権法30条1項1号)、技術的保護手段の回避により可能となった複製(同2号)、違法な自動公衆送信を受信して行う録音・録画(同3号)を原則として著作権侵害とする規定が存在する。しかし、著作権法ではない特別法によって私的複製を制限する立法は、本法律が最初の事例である。その点から、私的複製の制限は、特別法という形ではなく、本来は著作権法の中で処理すべき課題であり、将来は著作権法に吸収すべきという指摘がある。
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