皮膚の肉眼所見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 05:00 UTC 版)
皮膚筋炎の皮疹はケブネル現象の典型例と考えられている。ケブネル現象とは、正常皮膚へ掻爬・外傷・炎症・瘢痕化刺激に続き、その部位に原病と同類の皮膚症状が出現することをいう。ケブネル現象は皮膚筋炎のほか、尋常性乾癬、扁平苔癬、サルコイドーシス、モルフェアなどでも認められる。皮膚病変を起こす全身的素因に加えて、局所への機械刺激が加わると病変を形成すると解釈できる現象である。ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候は関節伸側の機械的刺激を受けやすい部位に生じ、ヘリオトロープ疹は恒常的に機械運動が行われる眼瞼に生じる。メカニクスハンドも母指尺側と他4指の橈側に出るのが特徴的であり、物を掴む際に物と接触する面に生じるケブネル現象である。 手の皮膚所見 手の皮膚所見は最も診断的価値が高い。ゴットロン丘疹、ゴットロン徴候は関節背面に生じる皮疹で丘疹性変化を呈する場合にゴットロン丘疹、それ以外の場合(主に紅斑)にゴットロン徴候という。特に示指、中指のMP関節やPIP関節に好発する。爪郭部の所見、すなわち爪囲紅斑および爪上皮出血点も非常に重要である。爪囲の変化はゴットロン丘疹やゴットロン徴候に先行することが多い診断的価値は高い。爪郭部の所見は皮膚筋炎に特異的ではないが膠原病に特徴的である。掌側の指関節周囲に紫紅色の鉄棒豆様の皮疹が見られることがある。これを逆ゴットロン徴候といい、抗MDA5抗体陽性例に特徴的な皮疹である。メカニクスハンドは手指の側面、特に拇指尺側や示指橈側を中心に生じる手湿疹に類似した皮疹である。抗合成酵素症候群に特徴的とされる。 顔面・頭部の皮膚所見 ヘリオトロープ疹は上眼瞼に見られる浮腫性紅斑で色調は紫紅色から暗紅色を呈することが多いが浮腫のみのこともある。頬部、前額、耳介などに紅斑もしばしば認められる。 体幹の皮膚所見 体幹ではV徴候とよばれる前胸部、ショール徴候とよばれる肩から上背部の皮疹がよく知られている。 四肢の皮膚所見 四肢の関節背面(肘、膝)にも紅斑を生じこれらもゴットロン徴候と呼ばれる。 部位によらない皮疹 水疱、脂肪織炎、皮膚潰瘍、多型皮膚萎縮(ポイキロデルマ)、皮下石灰化沈着などが認められる。特に皮下石灰化沈着は抗NXP2抗体陽性例に多い。
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