畳音(重複)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 05:03 UTC 版)
完了・過去完了・未来完了のほとんどでは、動詞幹の語頭で畳音が用いられる。しかし、完了の一部では例外的に畳音が使われず、また反対にアオリストで畳音が用いられることもある。畳音には以下の3種類がある。 音節畳音 単子音(ῥ- は除く)か、閉鎖音+共鳴音で始まる動詞には、語頭の子音の後に -ε- を付したものを語頭に加える。ただし、語頭の子音が帯気音の場合は、無気の形にした上で重複される。グラスマンの法則も参照。 加音 加音は畳音の代わりになることもあった。上記にない子音群および複子音で始まる動詞と、母音で始まる動詞は加音と同じ方法で重複される。これは直説法だけでなく、完了時制のすべての場合に当てはまる。 アッティカ式畳音 後ろに共鳴音(ときには δ, γ)が続き、かつ ᾰ, ε, ο で始まる動詞は、語頭の母音とその後ろの子音からなる音節が重複し、さらにそのあとに続く母音が長音化する。つまり、ἐρ > ἐρηρ, ἀν > ἀνην, ὀλ > ὀλωλ, ἐδ > ἐδηδ となる。この畳音は、その名とは異なり実際にはアッティカ方言特有の現象ではなかったが、規則化されたのがアッティカ地方であることは確かである。これは本来、喉音と共鳴音からなる子音群の重複を伴うものであった。すなわち、ギリシア語の標準的な喉音の発達(閉鎖音を伴う形は類推)では *h₃l > *h₃leh₃l > ὀλωλ である。 例外的な畳音は歴史言語学的に理解できる。たとえば、λαμβάνω(語根 λαβ-)の完了幹は *λἔληφα ではなく εἴληφα であるが、これは元々の形である σλαμβάνω(完了幹 σἔσληφα)が、(準)規則的な変化を経たためである。重複は、特定の動詞の現在幹において目に見えることもある。そのような語幹は、語根の語頭の子音+ ῐ の音節を加える。一部の動詞では、重複の際に鼻音が現れることもある。
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