甫庵の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 04:32 UTC 版)
甫庵は『新編医学正伝』など医書や古典籍を活字で刊行しており、『補註蒙求』は日本で現存する最古の活字本であるとして知られている。また歴史を扱った書籍も表しており、『太閤記』『信長記』は江戸時代に刊行され、一般的な書物として読まれた。 甫庵の著書は儒教的価値観に基づく人物評が強く、虚構を入れた性格の資料であることが指摘される。『信長記』における長篠の戦いにおける三段撃ちなど、彼の本から知られた逸話は多いが、甫庵は意図的に創作を取り入れている。また『太閤記』では実際に起った出来事の時日を変更し、整合性をもたらすために文書の改変・改竄を行っている。甫庵は太田牛一を「愚にして直な(正直すぎる)」と評し、牛一の『信長公記』が写本でしか伝えられなかったのに対し、甫庵の『信長記』は刊本として大いに流行り広く大衆に親しまれた。しかし大久保忠教は『三河物語』において、「イツハリ多シ(偽りが多い)」としており、三つのうち一つぐらいしか事実が書かれていないと評している。また甫庵自身も『太閤記』に収められた『太閤記八物語』では、「(甫庵の信長記は)言葉が麗しくなく、文章の連続性もないと言われることが多い」が、よく読まれているとしている。甫庵が前田家から知行を貰う身であったこともあってか、前田家に関しては殊更に手が加えられている。 実証的歴史学においては、牛一『信長公記』が該当期の記録資料として活用される一方で、甫庵の著作である『信長記』・『太閤記』の史料的価値は甚だ低いとされている。
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