現代のナシード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/22 17:51 UTC 版)
20世紀の後半より、政治的な内容、人権問題、環境問題などを扱った、非伝統的な内容のナシードが作られるようになっている。また、歌詞の内容が広がりを見せるのと同時に、楽器の使用を許容する動きもあり、ヴァイオリンを使用した演奏や、ナシード歌手の中で最も人気のあるサミー・ユースフのように、エレキ楽器を含む多数の楽器を用いた楽曲を発表する例もある。ナシードに楽器を使用する事については、イスラム教の戒律から逸脱しているという非難がある一方で、モスクでの礼拝を司るイマームの中にも、表向きは器楽を非難するものの、プライベートな場所では楽器を使用したナシードを聴いて楽しむ者もいる。 現在では、アラブ人ではないナシード創作家が数多くおり、英語やトルコ語などアラビア語とは異なる言語で歌っている。こういった、いわゆる「ナシード・バンド」にはネイティヴ・ディーン、アウトランディッシュ(英語版)などがある。他に、よく知られたアーティストとしてかつてキャット・スティーヴンスとして知られたユスフ・イスラムなどがいる。 こうしたアーティストによる、イード・アル=アドハー、イスラム志向のフェスティバル、会議、ショーにおけるパフォーマンスは、ISNAを含むイスラム教徒の大衆に支持されている。一方、他のアーティスト達や"Nasheed Bay"などの組織は、楽器の使用を増やす現在の傾向とは異なる、楽器を伴わないナシードを推進している。 マレーシアにおいては、ナシードは独特の発展を遂げており、イスラム復興運動の過程で学校や大学でもナシードが歌われ、大会も開催されるようになった。1990年代に入ると、マハティール首相の、マレーシアの近代化についての提言に基づき、「ナシッド・エラ・バル(新時代のナシッド)」運動が首相府により推進された。「ナシッド・エラ・バル」運動をきっかけに、マレーシアではレコード会社がアッラー讃美などの伝統的な歌詞の内容を維持しつつ、ソロ、コーラスによるアカペラや、楽器を伴う形の「ポップ・ナシッド」をリリースするようになった。マレーシアの「ポップ・ナシッド」の代表例としてライハンが挙げられる。
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