犬を使った実験及び、実験内容の倫理的問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 20:27 UTC 版)
「イワン・パブロフ」の記事における「犬を使った実験及び、実験内容の倫理的問題」の解説
一般的に「パブロフの犬」としてよく知られる実験である。犬のほおに手術で管を通し、唾液の分泌量を測定した。ベルを鳴らしてからエサを与える事を繰り返した結果、ベルを鳴らしただけで唾液を出すようになった。 さらにベルだけを鳴らし続けると次第に反応は消えていくが、数日後同様の実験をしても犬は唾液を分泌する。前者を『消去』と言い、後者を『自発的回復』と言う。 なお「パブロフの犬」というと単数の印象を受けるが、実際には数百頭いたらしい。また、実験内容には倫理的問題を内包するものもある。以下は書籍「罪なき者の虐殺(著 Hans Ruesch)1991年発行」より引用。 パブロフは、動物に精神的苦悶を生じさせる新たな方法をつねに考案する面で、非常な独創性を示した。 ある例では、レニングラードの大洪水を経験したイヌを使用した。彼らは水が流れ込んできたとき、犬小屋に閉じ込められていて、多くは水の上にかろうじて頭だけを出して何日も耐えていたのである。パブロフはこれらの動物を檻に入れて、その下に水を流し、洪水が戻ってきたと思わせた。この実験は同じイヌたちに何度も繰り返され、そのたびごとに彼らは怯えて苦悶したのである。 別の動物は、二個のメトロノームの刻む拍子の相違に恐怖を感じるよう教え込まれた。拍子を刻み始めるとイヌは体が震えだし、目を見開いて口からよだれを流し、深く喘ぐ様な呼吸をし、時折唸り声を出し、いきなり机の上にどさりと身を沈めた。同じイヌは階段から落ちるのを恐れるように訓練され、恐怖に悶えて階段の上で立っていた。 数多くのイヌの脳に二度手術を行ったあとで、パブロフは彼らの苦痛の表示、落ち着かない態度、極端に敏感で痙攣的な状態、それに伴う―明らかにパブロフは意外でもあったようだが―拷問者に対する発作的な敵意を描写した。報告の中で、この1904年のノーベル賞受賞者は、つぎのように書いた。「彼らの痙攣状態のひどさは次第に大きくなり、死に至るが、それは通常手術の二年後である」二年という歳月……しかし、パブロフが特別の愛情で記憶していた一頭のイヌがいた。それは雑種犬で、二年間に128回の手術に耐えて死んだ。
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