しょうそん 焼損
焼損
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/25 05:28 UTC 版)
本罪は条文上「焼損」をもって既遂に達する。「焼損」の意義については、保護法益との関係で以下のような学説の争いがある。 独立燃焼説 火が媒介物を離れて目的物に燃えうつり、独立に燃焼を継続する状態になることが「焼損」であるとする。独立の燃焼が開始すれば公共の危険の発生には十分である、という点を根拠とする。放火罪の公共危険罪としての側面を強く意識した結果、最も早い時点で既遂を認める学説であり、他説からは放火罪の財産犯的側面を無視するものであるという批判を受ける。なお判例は一貫して独立燃焼説を採っている。 効用喪失説 目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用を喪失することが「焼損」であるとする。財産的価値がその時点で失われることを根拠とする。つまり、独立燃焼説とは逆に、放火罪の財産犯的側面を強調する学説であり、その結果最も遅い時点で既遂を認めることになる。必然的に他説からは、放火罪の公共危険罪的側面を無視するものであるという批判を受ける。 燃え上がり説 目的物の重要部分が燃えはじめ、容易に消すことができない状態になることが「焼損」であるとする。公共危険罪的側面と財産犯的側面を両方加味した結果、既遂時期も独立燃焼説と効用喪失説の中間に位置する学説である。 毀棄説 毀棄罪の基準により、火力によって目的物が損壊することが「焼損」であるとする。 なお、1989年7月7日の最高裁判所第2小法廷判決においては、エレベーターの壁約0.3平方メートルを焼損しただけでも、この犯罪の構成要件に該当すると判示された。
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