漫画史的位置づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 08:05 UTC 版)
本作を連載していた当時の『月刊アフタヌーン』は、主流や王道から外れた独創的な漫画作品を掲載している雑誌の中では最も著名と言える位置づけの雑誌であった。本作が連載されていた1990年代半ば頃は、漫画の売れ行きがピークを迎えると同時に「近頃の漫画はつまらない」という言説が取りざたされるようになった時期でもあった。本作はそうした言説の中にあって例外として評価された作品でもある。連載当時における本作は、藤島康介の『ああっ女神さまっ』と並び立つ『アフタヌーン』の看板的な作品であった。雑誌編集部は長く連載を続けさせたい意向であったともいわれ、1995年の連載終了後も、『アフタヌーン』のコラボレーション企画では比較的大きな扱いを受けている。なお本作は、根強い人気を持ちながら知名度の低い作品という印象で語られがちであるが、単行本はロングセラーとなっており累計発行部数は多い。 本作の連載中は環境問題が大きなブームとなっており、また連載が終了した1995年初頭は阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件の影響も相まって社会に終末感が漂う時代でもあった。本作は普遍的な題材を扱いつつも、連載当時の時代性や風潮、若者の言葉遣いなどが色濃く反映された作品でもある。本作のように人外の生態系の側から環境問題を問う形で物語が始まるものの、物語の途中でそれが否定され異なる結論に到達する構造は、宮崎駿の漫画版『風の谷のナウシカ』や、楳図かずおの『14歳』といった同時代の漫画にも見ることができる。特に漫画版『風の谷のナウシカ』と本作は、いずれも連載当時の環境問題ブームと関連づけられて評価されながらも、著者がそのブームに対して否定的な見解を述べていることや、隣人的な存在が敵となるという他者感覚、人類が罪を背負って生きていくという結末などの点で共通点がある。
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