湖の層構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/11 01:02 UTC 版)
「ジェリーフィッシュレイク」の記事における「湖の層構造」の解説
ジェリーフィッシュレイクは上下2つの層からなり、溶存酸素が比較的豊富な上層(混合層、mixolimnion)と、低酸素状態の下層(monimolimnion)で構成される。酸素濃度は表層の5ppmから徐々に低下し、水深15m付近でゼロとなる。この構成は年間を通じて永続的なもので、季節的な撹拌や変動はみられない。部分循環湖の多くは淡水湖で、ジェリーフィッシュレイクのような塩湖の例は世界に約200ヶ所が知られているに過ぎない。層構造が季節変動しない塩水湖も少ないが、マカラカル島や他の近隣の島々には11ヶ所の同様の例がある。 層構造が生じるのは、垂直方向の混合を妨げる3つの要因が関わっている。すなわち、周囲の岩壁と樹林が風を遮るため波が生じないこと、湖への水の供給源(降雨、トンネルを通じた潮汐流)がすべて表層近くにあること、熱帯気候で気温の季節変動が少なく対流が生じにくいことが要因と考えられている。 酸素を含む上層は、表層から水深15mの範囲である。酸素を必要とするすべての生物はこの層で暮らしており、クラゲと数種の魚類・カイアシ類が含まれる。この層はやや濁っており、透明度はおよそ5m程度である。水深3mまでは、降雨によって塩分濃度が低くなっている。 ジェリーフィッシュレイクは表層近くにある3本のトンネルによって、周囲の海とつながっている。湖の水は潮汐によってこのトンネルから出入りし、湖の潮位は近接するラグーンの約1/3に抑えられている。潮位のピークはラグーンと比べ約1時間40分遅れる。生物学者William Hamnerは、1度の潮汐によって湖の水のおよそ2.5%が入れ替わると計算した。流入は表層近くで起きるため、下層の無酸素層はほとんど潮汐の影響を受けないとみられている。 無酸素層は水深15mから湖底まで達し、この領域の酸素濃度はゼロである。一方で、硫化水素の濃度が深度に従ってゼロから80mg/literにまで上昇する。上方の3mにはバクテリアが濃密に生息する層があり、紅色細菌の1種を多量に含んでいる。この細菌層でほぼすべての太陽光が吸収されるため、これより下の領域は澄んでいるが非常に暗い。Hamnerはこの層の透明度を30mと見積もっている。無酸素層には高濃度のアンモニアとリン酸塩が含まれ、これらは上層にはほとんど存在しない。無酸素層は湖で遊泳する人間にとって危険な領域で、皮膚を傷める恐れがある。安全性確保のため、ジェリーフィッシュレイクではスクーバダイビングは禁止されており、ダイバーが到達できる深度を制限している。
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