温泉権の明認方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/16 06:10 UTC 版)
温泉権は、明認方法の設置がなければ善意の第三者に対抗できない。明認方法の設置とは、温泉が存在する土地に立て看板を設ける等の方法で温泉権の存在を示すことである。明認方法の設置は、信義則により第三者の善意を否定し、または相手方の重過失を主張するためのものである。現地を実際に訪れれば温泉権の存在が想定できる場合には、配管設備なども明認方法となる。判例によれば、温泉権の明認方法は、地方によっては、温泉組合・地方官庁への登録でも足りるとされる。有名な温泉地において温泉の存在する土地を購入する場合においては、温泉権の存在について温泉組合や地方官庁への問い合わせを行うことが慣習であり、これを行わないことは信義則に違反するからである。 大審院昭和15年9月18日(大審院民事判例集19巻1611頁)は、民法177条を類推し、温泉権の移転を「第三者」に対抗するには、温泉組合・地方官庁等への登録、立て看板の設置など明認方法をしなければならないとしたものである。なお、判決文において、善意・悪意という表現は為していない。 福岡高裁昭和34年6月20日(下級裁判所民事裁判例集10巻6号1315頁)は、問題となった温泉について、温泉台帳への登録がされている等の事実を認めた上、「台帳制度は温泉の濫掘防止や公衆衛生保健に関する取締等を主たる目的とするものと認められ、本件温泉所在地方において右台帳の記載をもつて温泉に関する権利変動の公示方法とする一般慣行の存する事実は未だ認められない」とする。 高松高裁昭和56年12月7日判決(判例時報1044号383頁)は、「本件温泉権がAに属した時代から現在に至るまで、引湯施設の設置及び旅館営業等によって、現実に各温泉権者が本件温泉を採取、利用、管理している客観的事実」の存在をもって、温泉権の明認方法であると認めた。
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