温泉権の設定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/16 06:10 UTC 版)
温泉権は、永久の期間に対する温泉利用料を前納することによって生じる(永久の期間に対する温泉利用料を前納することを約したうえで、これの支払を免除された場合を含む。)。これを慣習的に「温泉権の設定」という。温泉権は、温泉が存在する土地の所有者に対して永年利用を認めさせる債権であるから、土地の所有者がこれを取り除くためには、少なくとも、永年の利用に相当する補償が必要となる。土地の利用に関する債権は、土地所有者が変われば消滅するのが原則である。しかし、温泉権の存在を知りつつ土地を所有した者が温泉権の消滅を主張することは、永年利用権としての温泉権を持つ者に多大な損害を与える反面、土地所有者側が利益を得るものであるから、信義則に反するとして認められない。もっとも、新しい土地所有者が十分な補償を支払えば、信義則による保護は外れるから、温泉権は消滅する。これを「滌除(てきじょ)」という。「滌除」は、物権である抵当権について民法に規定されていた用語(ただし現在は法改正によって削除されている)であって、補償金によって、その土地に対する所有権以外の権利を消滅させる行為である。ただし、温泉権の「滌除」は、権利の濫用となる場合は認められない。判例によれば、温泉を汲み上げる装置や配管等の費用が膨大であり、容易に移転することが不可能な場合は、正当な権限を有する場合であっても、権利の濫用として認められないとされる。なお、全くの不毛の地に永小作権が設定できるのと同じく、全く温泉が存在しない土地であっても、投機目的で温泉権を設定できるが、そのような場合においても、「滌除」を回避することができるかどうかについては、信義則による保護の考え方によって判断が分かれるところであるが、この点に関する判例は未だ出されていない。
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