減衰期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/09 09:14 UTC 版)
このような過程を経て強まった下降気流はもともと上空にあったため、また昇華によっても冷やされているので非常に低温である。結果的にこの低温の下降気流が雲の底に集まり、部分的に高圧状態となる。このような下降気流によって部分的に気圧が高まった場所をメソ・ハイ(メソスケールの高気圧という意味。雷雨性高気圧とも)と呼ぶ。この空気が雲底から地上に向けて一気に流れ出す(冷気外出流)。最終的には上昇気流よりも下降気流のほうが強くなり、上昇気流が弱まってくる。これが減衰期の始まりである。減衰期になると降水セルは収束に向かう。 また、メソ・ハイから空気が地上に向けて一気に流れ出すとき、周りの比較的暖かい空気と衝突して、冷たい空気が暖かい空気に入り込むような形をする。これは寒冷前線の発生のメカニズムに似ている。したがってこの部分では小型の寒冷前線のようなものができ、この線に沿って突風が吹くこともある。この線をガストフロントという。この時に地上では、下降気流が増すことによって、残っていた雨粒がしとしとと降るなどし、最後に雲が消えるのである。こうして降水セルは一生を終える。 激しい降水が数分続いてその後突風を伴い、降水が弱まるという気象現象は多く観測されている。しかし、降水セルの一生が今述べた3段階を経るかどうかは大気の状態に依存する。ただし、この3段階はかなり活発な積乱雲において起こるのであり、降水セルによっては成長期からすぐに消滅に向かうこともある。 また、先ほど述べた原因によって起こる下降気流が極端に強くなり、地上に被害をもたらすこともある。積乱雲に伴う下降気流が極端に強い場合、これをダウンバーストという。ガストフロント付近では、突風により局所的に気流の渦が多数生まれ、このうちごく少数が竜巻となって、稀に被害をもたらす場合がある。 降水セル及び積乱雲が消滅しても、先ほど述べたガストフロントは残ることがある。ガストフロントはメソ・ハイが原因で起きたものなので、周りより冷たい空気からなっている。ガストフロントにさらに湿った暖かい空気が流れ込んだ場合、再びその部分に上昇気流が発生し、新たな積乱雲が発生することもある。もとの積乱雲を原因として新たな積乱雲が発生するので、積乱雲の世代交代と呼ばれる。 積乱雲の世代交代には次の様な場合もある。2つの積乱雲が並行して存在するとき、両者の積乱雲のメソ・ハイによって下降気流が同時期に発生することがある。すると2つの下降気流がぶつかるため、空気は上にいくしかなくなり、上昇気流が発生し、この上昇気流によって積乱雲が発生するのである。このような世代交代は衛星画像で見ると分かりやすい。1つの積乱雲の塊を先頭にして、その後ろにいくつもの積乱雲が続くような場合である。このような積乱雲は今述べたメカニズムによって発生していることが多い。
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