減光の原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/19 15:51 UTC 版)
「KIC 8462852」の記事における「減光の原因」の解説
仮に、小惑星や彗星の残骸や破片が原因だとした場合、KIC 8462852Aの周りで強い赤外線が観測されるはずだが、スピッツァー宇宙望遠鏡やWISEなどによる観測ではKIC 8462852Aの周りに赤外線は観測されなかった。この結果は、少なくとも減光が岩石質の天体の残骸によるものではないことを示唆する。そのため、冷たい彗星の残骸による可能性が高くなった。 SETIの科学者がアレン・テレスコープ・アレイで1-10GHzの電波を調べたものの、人工的な信号を見出すことはできなかった。 当初、最も有力と考えられていた説はKIC 8462852Aの周りを楕円軌道で公転している巨大な彗星とそれから分裂した残骸群が時折、KIC 8462852Aの周りを通過し、減光をもたらすというものである。この説が正しければ、2011年に観測された減光は残骸群の先頭にある巨大な彗星によるものであり、2013年頃に観測された減光はその彗星から分裂した残骸や破片によるものになる。現在は彗星と残骸群がKIC 8462852Aから遠ざかっているとされているため、赤外線が観測されない可能性もある。 しかし、前述のようにKIC 8462852Aが過去にも長期の減光を起こしていたらしいことが判明し、彗星説は有力ではなくなった。この減光を発見したシェイファーによれば、彗星説を採用するなら直径200kmの彗星が約64万8000個も列をなして通過しなければこの現象を説明できず、そのようなことはきわめて考えにくいことだという。 彗星説以外のモデルとして、巨大な環を持った木星型惑星が、その前後60度(ラグランジュ点L4とL5)に大量のトロヤ小惑星を従えて公転しているという仮説が提唱された。ただし、このモデルで減光を説明するには、惑星や環が恒星に対して非常に大きなサイズを持つ必要があり、小惑星についても非現実的な量が存在しなければならないという問題がある。 ジェット推進研究所を退職後にアマチュア天文家として活動しているブルース・ゲイリーは、KIC 8462852Aが、中央に大きな穴の開いた薄く不透明なダスト円盤に囲まれているというモデルを紹介している。KIC 8462852Aと円盤を斜めから観測していると仮定すると、円盤中央の穴が細長い楕円形に見え、その中央に恒星が位置しているように見えるはずである。傾きの大きさによっては、手前側の円盤の内縁が恒星をわずかに覆い隠すように見える、という状況が生じ得る。円盤の内縁が滑らかであれば、円盤が公転してもそれが恒星の光を遮る割合はほとんど一定に保たれ、これがKIC 8462852Aの平常時の光度と考えられる。この円盤の内縁には所々乱れて瘤のように膨らんだ部分があるかもしれない。その部分が恒星の手前を通過する間は、円盤が恒星を隠す面積が一時的に増加し、不規則な減光が生じ得る。ゲイリーは円盤の内縁がKIC 8462852Aから2.9天文単位の距離にあり、1512日周期で公転しているというモデルを例示している。
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