消化管からの吸収
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 06:43 UTC 版)
経口投与の薬物の吸収に関係する消化管の部位は主に胃、小腸、大腸である。なかでも通常の低分子化合物の医薬品を経口投与した場合は薬物の大半は小腸上部から吸収される。経口投与される多くの低分子化合物が弱電解質であり水溶液の状態では非イオン形とイオン形が一定の割合で存在する。非イオン形は一般にイオン形に比べ脂溶性が高いため生体膜を通過しやすい。脂溶性薬物が受動拡散によって吸収される場合、その吸収の程度は吸収がおこわなれる部位の面積(消化管の内壁面積)、運動性(薬剤滞留性の大小)、血液量(吸収後の濃度勾配)またはその部位に残留する薬物濃度などの要因によって規定される。 小腸上部 小腸には輪状のひだの表面に絨毛と呼ばれる無数の小突起が存在する。絨毛の中には毛細血管やリンパ管が数多くあり、またその外側には単層の上皮が存在する。上皮細胞の表面にはさらに微絨毛と呼ばれる小さな突起があり刷子縁膜と呼ばれている。このような構造から小腸内腔の表面積は著しく広くなっており、小腸を単なる円筒と考えた場合に比べ、微絨毛構造がある場合では約600倍にも達する。さらに小腸上部には各種トランスポーターも多く存在する。これらのことは小腸上部からの薬物吸収が有利である理由とだと考えられている。 胃 胃は小腸のような絨毛構造がないため、表面積は大きくなく、吸収に有利な部位ではない。しかし胃内のpHは1~3であるため酸性薬物はある程度吸収される。 小腸下部、大腸 小腸下部や大腸では、薬物は小腸上部で吸収されている場合が多く、実際の吸収は少なくなる。また大腸では小腸のような絨毛構造を持たず、総表面積は小さい。しかし小腸下部や大腸は小腸上部よりもpHが高く、塩基性薬物はこれらの部位でもかなり吸収される。
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