母国語の違いによる虫の音の反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 10:07 UTC 版)
「虫の音」の記事における「母国語の違いによる虫の音の反応」の解説
1978年に、角田忠信の『日本人の脳 脳の働きと東西の文化』が出版されるとベストセラーになり、「日本人には虫の声が聞こえ、外国人には雑音として聞こえる」という説が広く知れ渡った。角田の説が発表されたのは1966年のインドの耳鼻咽喉科学会の雑誌であり、その後は学術雑誌に角田テストによる実験研究は発表されていない。角田は、日本語母語話者は虫の音や川のせせらぎなど自然音を、言語を処理する左脳で聞き、非日本語母語話者は雑音を処理する右脳で聞くとする。しかしこの角田の説を導いた独自の実験手法は不明瞭で再現性がなく、1981年に行われた検証実験でも否定されている。雑誌『科学朝日』1990年3月号で立花隆は、脳画像測定装置において日本人と西洋人との脳機能に違いは見出せなかったという実験結果を紹介し、角田の説が脳の専門家の間で支持されていない状況について言及した。これに対して『科学朝日』1990年6月号に角田からの反論が掲載され、続く7月号、8月号にも論争が掲載された。1990年代にfMRI(磁気共鳴機能画像法)やPET(陽電子放出断層撮影)により、リアルタイムに脳の活動を調べることが可能になったが、日本人だけが左脳で虫の音を聞くことを証明した研究はない。角田の説は科学的な手続きや検証を十分経たものではなく、現在、支持する脳科学者はほとんどいないが、日本人は自然音への異なる感性を持つという神話は、広く一般に浸透している。
※この「母国語の違いによる虫の音の反応」の解説は、「虫の音」の解説の一部です。
「母国語の違いによる虫の音の反応」を含む「虫の音」の記事については、「虫の音」の概要を参照ください。
- 母国語の違いによる虫の音の反応のページへのリンク