母からの視点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 06:13 UTC 版)
瑠璃いろの朝に想へばこの子らを生みたるほかに誇ることなし 札幌医科大学附属病院に入院中に詠まれた、最晩年の作品のひとつである。死を前にして、母として子どもたちを生んだことのみが誇りであると、ふみ子の思いをストレートに詠んだ歌である。その演技性が問題とされるふみ子の短歌であるが、子どもを詠んだ歌に関しては素直な作風であることを指摘する意見もある。 しかしふみ子はただ単に、子を思う母の視点から歌を詠んでいたわけではない。 コスモスの揺れ合ふあひに母の恋見しより少年は粗暴となりし この歌もやはりふみ子最晩年に詠まれている。当時、長男の孝は小学校高学年であり、思春期を迎えつつあった。長男の孝はふみ子に母親以外の女の一面を見てしまい、そのことが孝の心を荒れさせていたのであった。いくら母であるとはいっても、現実の生活の中ではただ単に子どもを愛しむばかりではなく、愛憎を含め様々な感情が交錯していくが、ふみ子の子を詠む短歌は、そのような母としての心の様々な揺れを詠んでいる。 ふみ子は一人の女性として母の立場と女の立場の対立ではなく、母性と女の混沌、共存した姿、つまり母と女とが絡み合っている真の意味での女性の素顔を詠んでいるとの意見がある。馬場あき子は、ふみ子は母と女の問題という「女歌」の課題をほとんど全て提示した歌人であると評価している。
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