歩行
『ヂャマイカ氏の実験』(城昌幸) 晩秋の夜。終電車を待つヂャマイカ氏は、もの思いにふけってプラットフォームを行きつ戻りつするうち、いつのまにか空中を歩行して線路を越え、向こう側のフォームへ到達してしまった。「私」はそれを見て驚愕したが、ヂャマイカ氏は「空間を大地と思い込んでいたため、歩けたのかもしれない」と言う。「私」の熱心な勧めで、氏は自宅の卓子(テーブル)に上り、もう1度空中歩行を試みる。たちまち氏は床に転落して、実験は失敗に終わった。
★2.水上歩行。
『宝物集』(七巻本)巻4 天竺に、愚直という者がいた。恒河川(=ガンジス川)に水が出て深かった時、愚直は「この川は渡れるだろうか?」と人に聞いた。聞かれた人は愚直を馬鹿にして、「水は踝(くるぶし)の所までだ」と言う。愚直はこの言葉を信じて渡ったところ、本当に川は踝の深さだった。
『法句譬喩経』巻1「篤信品」第4・第1話 世尊が大河の岸辺で説法するが、村人たちは経法を信じない。そこで世尊は1人の人を化作し、その人は水上を歩いて来て、世尊を礼拝する。驚く村人に、化人は「この河は踝ほどの深さだと聞き、それを信じて渡った」と言う。世尊は「深く信ずれば輪廻の淵すら渡れる。数里の河など奇とするに足らぬ」と説く。
*オリオンが海上を歩く→〔海〕5の『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第4章。
*イエスが湖上を歩く→〔湖〕2の『マタイによる福音書』第14章。
『荘子』「秋水篇」第17 燕の寿陵の町の若者が、趙の大都会・邯鄲まで出かけ、都会風の歩き方を学ぼうとする。しかし若者は、それを会得できないどころか、もとの歩き方をも忘れてしまった。若者は、四つん這いになって帰って行った。
『人間の足音』(川端康成) 彼は膝の関節を病み、右足を切断した。彼は退院後、多くの健康な両足が地を踏む音を聞こうと、珈琲店の露台に座る。しかし、両足の音が健やかに揃っているものは1つもなく、皆、彼と同様のびっこの足音に聞こえる。彼は妻に「2本の足で立って歩くようになった時に、人間の魂の病気が始まった。足音が揃わないのも当然かもしれない」と語った。
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