次世代セキュアコンピューティングベース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/02 18:03 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動次世代セキュアコンピューティングベース[1] (Next-Generation Secure Computing Base, NGSCB) とは、マイクロソフト社によって設計されたソフトウェアアーキテクチャである。以前はコードネーム「Palladium」[2]や「Trusted Windows」[3]という名前で知られていた。このアーキテクチャは将来の Microsoft Windows オペレーティングシステム上で、より良いプライバシー、セキュリティ、システム整合性をユーザーに提供することを目的としていた[4][5]。NGSCBは、Windowsオペレーティングシステムの下位互換性、柔軟性、オープン性を維持しながら、セットトップボックスなどのクローズドプラットフォームのセキュリティに匹敵する、安全なコンピューティングソリューションを提供するための、マイクロソフト内での長年の研究開発の結果であった[6][7][8]。NGSCBに関するマイクロソフトの主な目的は「ソフトウェアをソフトウェアから保護する」ことであると述べられていた[6]。
2002年に発表された「信頼できるコンピューティング」イニシアチブの一部であったNGSCBは、当時「Longhorn」として知られていたWindows Vistaと統合されることになった[2]。NGSCBでは、Trusted Computing Group (TSG)によって設計されたハードウェアを使い、Windowsと共存し、新しいアプリケーションに機能を提供する「Nexus」と呼ばれる新しいハイパーバイザー(ドキュメントでは一種のカーネルと呼ばれていた)によってホストされる並列操作環境を生成する。Nexusは、ハードウェアベースのプロセス分離、整合性測定に基づくデータ暗号化、ローカル・リモートのマシンやソフトウェア構成の認証、およびユーザー認証とグラフィックス出力用の暗号化されたパスなどを提供する[4][9]。また、NGSCBは、情報の使用に関するデジタル著作権管理(DRM)ポリシーの作成と配布を容易にする[10]。
NGSCBは、その開発中に多くの論争の的となった。批評家は、ユーザーに制限を課し、ベンダーロックインを実施し、フェアユースの権利とオープンソースソフトウェアを損なうと主張した。NGSCBは、マイクロソフトがWinHEC 2003 [11]で最初にデモンストレーションが行われた後、2004年に改訂が行われ、以前のアプリケーションもその機能の恩恵を受けることができるように変更された[12]。2005年のレポートでは、マイクロソフトはNGSCBで計画を縮小し、2006年に自社で定めている期限までにWindows Vistaを出荷できるようにする予定だと報じられた。変更後の計画では、マイクロソフトはアーキテクチャの一部であるBitLockerのみを出荷することにした。BitLockerは、オペレーティングシステムを起動する前に、ブートファイルとシステムファイルの整合性を検証するTrusted Platform Module (TPM)を使う選択肢を提供する機能である[13]。NGSCBの開発は約10年に及び行われ、その後中止された[7][14]。これはWindows Vista向けの主要機能のうち最も長く開発期間がかかったものとなった。
NGSCBは、マイクロソフトが「Pillars of Windows Vista」として定義していた「Windows Presentation Foundation」「Windows Communication Foundation」「WinFS」といった技術からは外れており、.NET Frameworkやマネージドコードを使ったソフトウェア開発ではなかった[9][15]。NGSCBはまだ完全には実現されていないが、Windows VistaのBitLockerでの、Windows 8のMeasured Boot[16]、Windows 8.1のCertificate Attestation,[17] 、Windows 10のDevice Guard[18]などにその概念が反映されている。
関連項目
- セキュアブート
- Intel LaGrande
- トラステッド・コンピューティング
- Trusted Platform Module(TPM)
- Intel Management Engine
脚注
- ^ 訳注: 現在のところ Next-Generation Secure Computing Base の正式な日本語訳はありません
- ^ a b Levy, Steven (2002年6月24日). “The Big Secret”. Newsweek. Newsweek LLC. 2015年1月30日閲覧。
- ^ “Privacy, Security, and Content in Windows Platforms
(Microsoft PowerPointの.ppt)”. Microsoft (2000年). 2015年1月30日閲覧。
- ^ a b Microsoft. “Shared Source Initiative Home Page”. 2015年1月30日閲覧。
- ^ “Microsoft 'Palladium': A Business Overview”. Microsoft (2002年). 2015年5月3日閲覧。
- ^ a b Aday, Michael. “Palladium”. Microsoft. 2015年1月30日閲覧。
- ^ a b Fried, Ina (2004年9月8日). “Controversial Microsoft plan heads for Longhorn”. CNET. CBS Interactive. 2015年1月30日閲覧。
- ^ “A Trusted Open Platform”. IEEE Computer Society (2003年7月). 2015年9月25日閲覧。
- ^ a b “Next-Generation Secure Computing Base - Overview and Drilldown
(Microsoft PowerPointの.ppt)”. Microsoft (2003年). 2015年1月30日閲覧。
- ^ Microsoft. “Next-Generation Secure Computing Base - Technical FAQ”. TechNet. 2015年2月16日閲覧。
- ^ “A Review of Microsoft Technology for 2003, Preview for 2004”. News Center. Microsoft (2003年12月15日). 2015年1月30日閲覧。
- ^ Evers, Joris (2004年5月5日). “WinHEC: Microsoft revisits NGSCB security plan”. Network World. IDG. 2015年1月30日閲覧。
- ^ Sanders, Tom (2005年4月26日). “Longhorn security gets its teeth kicked out”. Incisive Media. 2015年1月30日閲覧。
- ^ Fried, Ina (2005年4月25日). “Microsoft: 'Trusted Windows' still coming, trust us”. CNET. CBS Interactive. 2015年8月18日閲覧。
- ^ “Microsoft: Palladium is still alive and kicking”. eWeek. QuinStreet (2004年5月5日). 2015年1月30日閲覧。
- ^ Microsoft. “Secured Boot and Measured Boot: Hardening Early Boot Components against Malware (DOCX)”. MSDN. 2015年1月30日閲覧。
- ^ Microsoft (2013年7月24日). “What's Changed in Security Technologies in Windows 8.1”. MSDN. 2015年3月6日閲覧。
- ^ Thomson, Iain (2015年4月23日). “Windows 10 Device Guard: Microsoft's effort to keep malware off PCs”. The Register. Situation Publishing. 2015年4月25日閲覧。
外部リンク
- Microsoft's NGSCB home page (Archived on 2006-07-05)
- Trusted Computing Group home page
- System Integrity Team blog — team blog for NGSCB technologies (Archived on 2008-10-21)
- Security WMI Providers Reference on MSDN, including BitLocker Drive Encryption and Trusted Platform Module (both components of NGSCB)
- TPM Base Services on MSDN
- Microsoft's "Digital Rights Management Operating System" patent
- Development Considerations for Nexus Computing Agents
- Microsoft Next-Generation Secure Computing Base - Technical FAQ (Archived on 2006-08-16)
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