業務請負における安全配慮義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 14:52 UTC 版)
「安全配慮義務」の記事における「業務請負における安全配慮義務」の解説
安全配慮義務を負うのは労働契約上の「使用者」には限られない。大石塗装・鹿島建設事件(最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決民集34巻7号888頁)では、鉄骨塗装作業に従事していた下請企業の労働者が転落死した事案において、「原審が認容した請求は…被上告人らが亡D(労災事故により死亡した下請企業の労働者)に対して負担すべき同人(元請企業)と被上告人B株式会社(死亡した労働者を雇用していた下請企業)との間の雇傭契約上の安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求であることが原判決の判文に照らして明らかである」とし、建設業における業務請負の元請企業について下請企業の労働者に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を認めた(同判決は「安全保証義務」との語を用いているが、これは「安全配慮義務」と同義と考えて差し支えない)。ただ、この判決では、元請企業が下請企業の労働者に対していかなる法的根拠に基づき安全配慮義務を負うかについては述べていない。 三菱重工業神戸造船所事件(最高裁平成3年4月11日第一小法廷判決第162号295頁集民第162号295頁)では、元請企業の造船所においてハンマー打ちの作業に従事していた下請労働者が職場の騒音によって聴力障害に罹患した事案において、以下の要件を満たす場合に、業務請負の元請企業について下請企業の労働者に対する安全配慮義務を負うことを認めた。この判決では、信義則に基づいて元請企業が下請企業の労働者に対して安全配慮義務を負うとしている。 元請企業が用意した設備・工具等を用いる 元請企業から事実上指揮監督を受ける 元請企業の直接雇用する従業員と同様の内容の作業を行っている 業務請負における安全配慮義務は、労働契約法が施行された現在では、同法第5条の類推適用という形をとるものと思われる。
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