松本烝治「二月十三日会見記略」
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「GHQ草案手交時の脅迫問題」の記事における「松本烝治「二月十三日会見記略」」の解説
松本の「二月十三日会見記略」は、ホイットニーが話した内容を大きく4つに分けて記述しているが、脅迫説が生じたのはその中の項目「三」の箇所である。 「ホイットネー」少将等先方提案数部ヲ交付シ極メテ厳格ナル態度ヲ以テ宣言シテ曰ク 一、日本政府ヨリ提示セラレタル憲法改正案ハ司令部ニトリテ承認スヘカラサルモノ(アンアクセタブル)ナリ 二、此当方ノ提案ハ司令部ニモ米国ニモ又聯合国極東委員会ニモ、何レニモ承認セサルヘキモノナリ 三、『マクアーサ』元帥ハ豫テヨリ天皇ノ保持ニ付深甚ノ考慮ヲ運ラシツツアリタルカ日本政府カ此ノ如キ憲法改正ヲ提示スルコトハ右ノ目的達成ノ為必要ナリ之ナクシテハ天皇ノ身体(パーソン、オブ、ゼ、エンペラー)ノ保障ヲ為スコト能ハス 四、吾人ハ日本政府ニ対シ此ノ提示ノ如キ改正案ノ提示ヲ命スルモノニ非ス 最モ此ノ提案ト基本原理(ファンダメンタル、プリンシプルス)及根本形態(ベーシック、フォームス)ヲ一ニスル修正案ヲ速ニ作成提示セラレンコトヲ切望ス(以下略) — 「二月十三日会見記略」より 松本手記には、2月13日に手交されたGHQ草案の採用は、「右ノ目的」すなわち「天皇ノ保持」のため必要であり、さもなければ「天皇ノ身体」の保障は出来ない、と記録してある。日本政府は、ポツダム宣言を受諾する際も、「天皇ノ国家統治ノ大権ヲ変更スルノ要求ヲ包含シ居ラザルコトノ了解ノ下ニ受諾ス」と天皇制維持のみを条件として受諾した経緯があり、「天皇ノ身体」に関わるこの記述の持つ意味はこの上なく重大であった。以下、「天皇ノ身体」発言とか「天皇ノ身体」問題とか言う時、それは上記松本手記の項目「三」の第2文「之ナクシテハ天皇ノ身体(パーソン、オブ、ゼ、エンペラー)ノ保障ヲ為スコト能ハス」という記述を指している。なお、ホイットニーのものとされるこの発言は、2・13会談の他の立会者による裏付けがなく、もっぱら松本一人の記録である。1950年11月23日に採録された東京大学占領体制研究会への口述において、松本は「パーソン・オブ・エムペラーは保証できないというから・・聞こうと思ったところ、聞く必要もないので聞かなかったが、これは容易ならぬことだと思っておりました」としている。
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