東アフリカにおけるアブヌワシ民話の広がり
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「アブー・ヌワース」の記事における「東アフリカにおけるアブヌワシ民話の広がり」の解説
東アフリカのスワヒリ文化では、アブー・ヌワースがアブヌワシ (Abunuwasi) の名でよく知られており、あたかも中東・アナトリアにおけるナスレッディン・ホジャばなしのように、アブヌワシが数多くの民話の中に登場する。アブヌワシはさらにキブヌワシ (Kibunuwasi) と名前がスワヒリ語化されることもあり、また、キャラクターも擬人化した野ウサギとなることもある。ザンジバルのスワヒリ語詩人ハジ・ゴラ・ハジ(スウェーデン語版)が説明するところによれば、西洋ヨーロッパによる植民地支配下のスワヒリ都市においては、東洋的な主題を持つ書籍の出版が一切禁止されたが、その中で唯一出版された非西洋的な主題を持つジャンルが、伝統的な昔話だったという。そして、植民地時代にスワヒリ世界に浸透したイスラーム世界の民話がアフリカの口頭文芸と混淆し発展する中で、千一夜物語の一登場人物であるアブー・ヌワースのキャラクターがスワヒリ民話に多くのインスピレーションを与えたという。 アフリカの角地域においては、1940年代にエリトリアで収集された民話に、アブナワス (Abunawas) の名前がみられる。これは、物書きの前職を買われてアメリカ軍により元イタリア植民地、エリトリアの宣撫工作に送り込まれたハロルド・クーランダーが同地で収集したもので、1950年にエチオピアの昔話として英語で出版された。収集に際しては、エリトリアの大人が話した民話をイタリア語を話せる子供たちがクーランダーに通訳した。1963年には日本語にも翻訳されて『山の上の火』の題で岩波書店から出版されている。その中の一話「アブナワスは、どうしておいだされたか」(原題: How Abunawas was Exiled)で、主人公アブナワスは「とてもかしこい男」であり、王や商人といった権威者を頓智や屁理屈できりきり舞いさせる。 スワヒリ諸都市に地理的文化的に近いコモロ諸島においても、民話口頭伝承の各種テーマの中で、「アブヌワの物語群」が、動物に関するアフリカ起源の民話口頭伝承と並んで、最もよく話されていることが1970年代に書かれた小著の中で報告されている:70。
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