本物のクラクリュール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/14 04:19 UTC 版)
「クラクリュール」の記事における「本物のクラクリュール」の解説
クラクリュールの原因は複数存在する。まず、乾燥と経年変化によって絵の具(画肌保護のために塗布されることがあるワニスも含まれる)が弾力性を失い収縮することが原因で発生する。また、キャンバスを支持体として描かれた絵画の場合には、経年変化による木枠の緩みあるいは板の反りのために貼られている画布の張力が変化し、塗布されている絵の具に影響を及ぼすことがクラクリュールの原因となる。さらに、その絵画がどこで、いつ、どのような状態で描かれたかによって、それぞれ特徴的なクラクリュールとなって生じることがある。一般的に絵画中央にはクラクリュールが少なく、絵画端辺にはクラクリュールが多く発生する。 キャンバスの弛緩や伸張のために生じるクラクリュールは、絵の具の乾燥や経年変化によって生じるクラクリュールとはかなり異なっている。画布に塗布された絵の具やワニスの層(レイヤ)にかかる圧力が絵の具が持つ弾力の限界を超えると、圧力を逃がすためにその圧力がかかった方向に向かってほぼ直角に絵画表面の絵の具(ないしワニス)にひびが入る。絵画中央付近のひび割れは木枠の短辺側と平行に生じることが多く、中央部分から木枠の画布が留められた部分に向かって伸びていく。これに対して絵画の端辺から生じたひび割れは丸い渦巻き様の形状となって広がっていく。フランス絵画、イタリア絵画、オランダ絵画それぞれで異なったクラクリュールの様式(様相)が存在している。 人為的にクラクリュールを的確かつ精密に再現することはほとんど不可能とされているが、天火で焼いて乾燥させる、画肌をこするなど、自然発生のクラクリュールに近づけて再現しようとする試みは昔から行われてきた。しかしながらこれらの方法で再現されたクラクリュールは画一的な文様となることがほとんどで、自然発生した本物のクラクリュールが持つ不規則な文様とは異なるものである。クラクリュールの文様は使用されているあらゆる色調の顔料が持つ化学的性質、個々の画家たち独自の絵画技法、描かれている支持体の種類など様々な要因に左右される。絵画が保管されていた場所の温度、湿度も大きな影響を与え、クラクリュールを調べることによって、過去にその絵画がどのように扱われてきたか、どのように運搬されていたか、そしてどのような修復がなされてきたのかを判断することも可能である。
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