本件に対する適用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 15:04 UTC 版)
「ノンフィクション「逆転」事件」の記事における「本件に対する適用」の解説
その上で、判決は、 事件・裁判から本作が刊行されるまでに、Aが「社会復帰に努め、新たな生活環境を形成していた事実に照らせば……前科にかかわる事実を公表されないことにつき法的保護に値する利益を有して」おり、 Aは「無名の一市民として生活していたのであって」、「社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として」前科の公表を受忍すべきケースではない とした。 「陪審制度の長所ないし民主的な意義を訴え、当時のアメリカ合衆国の沖縄統治の実態を明らかにしようとする」作品の目的を考慮すべきとの被告(伊佐)の主張に対しては、判決は、実名を使用しなければその目的が損なわれると解することはできないとした。その理由として、本件作品が歴史的事実そのものの厳格な考究をしたものではなく、一部想像で書かれた部分や、Aが事実でないと主張している部分があり、被告自身を含む陪審員は仮名で記載されていることを挙げている。 本件著作は、上記目的のほか、Aら4名が無実であったことを明らかにしようとしたものであるから、本件事件ないしは本件裁判について、Aの実名を使用しても、その前科にかかわる事実を公表したことにはならないという被告の主張に対しては、本件著作は、原告ら4名に対してされた陪審の答申と当初の公訴事実との間に大きな相違があり、また、言い渡された刑が陪審の答申した事実に対する量刑として重いという印象を強く与えるものではあるが、原告が本件事件に全く無関係であったとか、原告ら4名の行為が正当防衛であったとかいう意味において、その無実を訴えたものであると解することはできないとした。 最高裁は、以上を総合して考慮して、実名を使用して前科を公表したことを正当とするまでの理由はないと判示している。
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