旧年の伝説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/17 04:00 UTC 版)
18世紀のマン島在住の郷土史作家 ジョージ・ウォルドロン(英語版)による記述が、ピール城の黒犬の伝説にまつわる唯一の確固たる情報源のようである。その著書『マン島の歴史と描写』(仮訳題名)では、この怪異は次のように伝えられている: (マン島の人たち)が言うには、彼らの言語でモーザ・ドゥーグ(Mauthe Doog)と呼ばれる大きな黒いスパニエル種犬の姿をした巻毛が毛むくじゃらな亡霊がおり、ピール城に化けて出たという。(城の)各室でたびたび目撃されたが、とくに守衛室におり、燭台が灯されるや、やってきて、兵士らの目前で、火元の近くに横たわるのである。(兵士たち)は、見るの慣れっこになっていて、そいつが最初に現れた頃にとらわれた恐怖は薄らいでしまっていたが、それでもそれなりの畏怖をいだきつづけていて、危害を及ぼす許可(正当理由?)を待ちうかがっている悪霊なのだと思っていたから、そいつと居合わせた時には、みだりに(神を冒涜するような)罵言はけっして吐かなかった。 — George Waldron, History and Description of the Isle of Man (初版 1731年) 1744年版, p.23 ピール城からは、一本の通路が教会の地所を突っ切って、守衛隊長の住棟(apartment of the Captain of the Guard)と連絡していたが、「モーザ・ドゥーグは、いつも日暮れとともにその通路からあらわれ、朝がおとずれると、またそこへ戻っていった」 城の守衛たちは、毎日交代で誰かが最後に城門を施錠して、例の通路をとおり、守衛隊長に鍵を渡す務めになっていたが、犬に用心して、仲間内のあいだでは、かならずあくる日の当番が同伴して二人制でおこなうようにしていた。ところが、あるときひとりの守衛が泥酔し、黒妖犬なんのそのと、当番でもないのに鍵を引っつかんで、通路に入ってしまった。不気味な音がしたが、誰も確かめに行くものはいない。その男がやがて守衛房にもどってくると、あきらかに恐怖にさらされた様子で、何がおこったのか口を聞くこともできなかった。そのまま三日もたつと死んでしまったという。その男の四肢や容貌はみにくくゆがんでいて、自然死ではない苦しい死に方をしたのだとされた。 モーザ・ドゥーグはウォルター・スコットが、連作ウェイヴァリー集の一篇、『 ピークのペヴァリル(英語版) 』 (1823年)のなかで "Manthe Dog" を紹介したことから、一般にも知られるようになった。ただしスコットは小説にあわせて設定を変えており、大きな毛むくじゃらの黒いマスチフ犬だとして、体形を大型に変えている。
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