日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/31 17:30 UTC 版)
日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎 SGLスタジアム | |
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施設データ | |
所在地 | 兵庫県尼崎市杭瀬南新町三丁目15-10 |
座標 | 北緯34度42分57.1秒 東経135度25分51.1秒 / 北緯34.715861度 東経135.430861度座標: 北緯34度42分57.1秒 東経135度25分51.1秒 / 北緯34.715861度 東経135.430861度 |
起工 | 2023年5月18日 |
開場 | 2025年3月1日 |
所有者 | 尼崎市 |
管理・運用者 | 阪神電気鉄道 |
グラウンド |
内野 - 黒土 外野 - 天然芝 |
スコアボード | LED |
ダグアウト |
ホーム - 一塁側 ビジター - 三塁側 |
照明 | LED 6基 |
設計者 | 久米設計 |
建設者 | 熊谷組 |
使用チーム • 開催試合 | |
収容人員 | |
約3,600人(+800人収容の臨時外野席) | |
グラウンドデータ | |
球場規模 |
グラウンド面積 - 約13,000 m2 両翼 - 95 m(約311 ft) 中堅 - 118 m(約387 ft) 左右中間 - 118 m(約387 ft) |
アクセス | |
阪神本線・阪神なんば線 大物駅より徒歩5分 | |

日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎(にってつこうはんエスジーエルスタジアムあまがさき)は、兵庫県尼崎市の小田南公園内にある野球場。略称はSGLスタジアムまたはSGL。また、最寄駅である大物駅にちなみ「大物」(だいもつ)と呼ばれることもある[1][2]。同公園に所在するゼロカーボンベースボールパークの中核施設である。
2025年3月1日に開場し、プロ野球のウエスタン・リーグに加盟する阪神タイガース二軍が2025年シーズンから本拠地としている。また阪神球団の女子チームである阪神タイガース Womenも当球場を使用している[3]。
解説
1983年に開園した小田南公園は日本で初めての防災公園であったが、公園一帯が左門殿川に近いことから、当球場は津波による浸水対策として地盤を平均で40センチメートル嵩上げした後に建設された。さらに、浸水対策の一環として、電気関連の主な設備をスタンドの2階に集約した[4]。阪神球団の親会社である阪神電気鉄道(阪神電鉄)は、球場や園地などを完成後に尼崎市へ寄附すること、土地の使用料を同市へ支払うことを条件に、寄附施設を含めた園内での40年にわたる営業権を同市から与えられている[5][6]。
建設を担当したのは熊谷組で、同社が建設した野球場としては滋賀県の皇子山球場に次ぐ2か所目であり、プロ野球球団の本拠地としては初となったため、プロ野球球団施設の専門的な設備などを調査するため、ゼロカーボンベースボールパーク移転前の阪神二軍施設である阪神鳴尾浜球場や、一軍が使用する阪神甲子園球場および付帯施設をあらかじめ見学した[7]。
この球場は、グラウンドサイズ、方位、内外野の黒土・天然芝、LEDを使用した照明設備など、甲子園球場と同様の規格や設備を可能な限り再現しており[8][9]、トラックマンやホークアイを甲子園球場に続いて導入し[10]、さらにスタジアム内のカメラ16台で解析するマーカーレス・モーションキャプチャ(ソニー傘下 キナトラックス社製[11])システムを日本で初めて導入した[12]。
スタンドに常設される観客席は3,600席で、完売した場合や完売が見込まれる場合は、800人まで収容できる外野場外のスペースを立ち見席扱いで開放する。球場の設計を手掛けた久米設計によれば、球場の形状は左右非対称で、阪神ファンをより多く収容できるように設計されている。この方針に沿って、一塁側のスタンドが三塁側のスタンドより大きく膨れるように配置し、一塁側のスタンドに極力多くの座席を設けている[13]。
阪神タイガースの公式グッズショップ「タイガースショップ」がスタンドの1階に配置されており、公園のみの利用者も立ち寄れるよう出入口はスタンドの外側に設けられている[14]。ショップでは、サステナビリティの推進に関する製品など当球場限定のグッズも取り扱う。さらに、内野スタンド内には飲食売店がある[15]。
当球場は阪神本線・阪神なんば線の高架橋に挟まれているため、スタンドの建設に際しては、走行中の電車の窓から球場の様子を望めるように防球ネットの高さなどを調整する計画であった[16]が、阪神の佐藤輝明が2021年4月9日の対横浜DeNAベイスターズ戦(横浜スタジアム)で推定飛距離140メートルの場外本塁打を放ったことを受け、外野部分の設計を急遽見直した[17]結果、防球ネットの高さは最高55メートルとなった[18]。なお、甲子園球場と同じく当球場には観客用の駐車場は用意されていないため、阪神球団は公共交通機関での来場を呼び掛けている。
2025年2月20日、竣工式およびオープニングセレモニーが行われ、阪神球団顧問の岡田彰布をはじめとする球団関係者が来場した[19]。
球場名
小田南公園の隣接地に生産拠点を構える日鉄鋼板が、開場に先駆けて当球場の命名権を取得した。阪神球団との間で二軍本拠地移転プロジェクトに関するパートナーシップ契約を熊谷組と共に締結したことに伴う取得で、契約期間中は「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」の名称を使用している[20]。
「SGL」とは、ガルバリウム鋼板のメッキ(三次元網目構造)にマグネシウムを2%添加した鋼板の名称である。日鉄鋼板によれば、このような改良を施したSGLでは、(ガルバリウム鋼板を含めた)従来品の3倍以上の耐食性を擁することが各種の性能試験で実証されている[21]。阪神二軍施設では、日鉄鋼板製のSGL鋼板を室内練習場などの壁面に用いている[22]。
施設概要
球場データ
構造・施設面積と機能[8]
- 地上3階建て、三塁側の構造物は一塁側と非対称
- エレベーター2基、津波一時避難場所
- 面積
- 建築面積 - 6,690 m2
- 延床面積 - 10,812 m2
- グラウンド面積 - 13,000 m2
- グラウンド
- スコアボード - LED(裏面に太陽光発電用パネル)
- 照明塔 - LED 6基
- 防球ネット - 最高 55 m
- 収容能力 - 最大 4,400人(常設3,600席〔うち18席は車椅子専用〕、臨時外野席800人)
観戦設備
無料だった鳴尾浜球場とは異なり観戦は有料で、外野席を除き全席指定席である。料金はカテゴリーA・カテゴリーBの2区分が設定されており、A・Bどちらの料金が適用されるかは試合により異なる。7回裏終了までは外出・再入場が可能。入場後の内野と外野の往来は不可[23]。
- 座席
- 甲子園球場で回収したポリエステル製ビールカップ(帝人フロンティア製造)の再生繊維をクッション材に配合した、コクヨ製造の特別仕様の座席「Centura」(センチュラ)を、客席の全座席および1塁側・3塁側のベンチに使用[24]。
- 座席区分
- コクヨプレミアムシート
- バックネット裏前方の約150席。コクヨが命名権を取得している。
- フィールドシートA(一塁・三塁)
- フィールドシートB(一塁・三塁)
- ネット裏指定席
- 内野指定席(一塁・三塁)
- 臨時外野自由席
- 内野エリアが完売または完売見込みの試合でのみ販売。座席は設置されておらず、コンクリート階段の観戦エリアからの観戦となる[23]。
- 車椅子席(ネット裏・一塁・三塁)
付帯施設
- 選手寮兼クラブハウス「虎風荘」
- 室内練習場[25]
主な試合の記録
開業記念試合
開業記念試合として、2025年3月1日・2日に広島東洋カープとの春季教育リーグ試合が開催された[26]。1日は5-5の引き分け、2日は3-2で阪神が勝利し、5番手で登板した石黒佑弥が当球場初の勝利投手となった[27]。
ウエスタン・リーグ公式戦
2025年3月14日の対広島戦がウエスタン・リーグ公式戦初使用になった[28]。広島が3-2で勝利し、当球場でのウエスタン公式戦初勝利を記録した。斉藤優汰が当球場での公式戦初の勝利投手、小林樹斗がセーブ投手となった[29]。
3月20日、対福岡ソフトバンクホークス戦で阪神の山田脩也が当球場第1号本塁打を記録した[30]。
アクセス
脚注
- ^ 「【阪神】“虎のプリンス”山田脩也が記念すべき“大物1号”…巨人から移籍の伊藤優輔からプロ初本塁打」『スポーツ報知』2020年3月20日。2025年3月30日閲覧。
- ^ 「【阪神ファーム通信】今朝丸裕喜が選抜高校野球に刺激「高校野球をもう1回やりたい気持ちになる」 先発デビューに向けて大物の地で鍛錬を積む」『サンケイスポーツ』2025年3月27日。2025年3月30日閲覧。
- ^ 【公式】阪神タイガース Women @Tigers_Womenの2025年3月8日の投稿 - x.com
- ^ "阪神タイガースファーム施設(二軍本拠地)の尼崎市への移転が正式に決定" (Press release). 阪神タイガース. 22 December 2021. 2024年3月10日閲覧。
- ^ "小田南公園整備事業に関する基本協定の締結について" (PDF) (Press release). 阪神電気鉄道・阪神タイガース. 21 May 2021. 2024年3月10日閲覧。
- ^ “阪神二軍本拠地、尼崎移転へ 球場整備などで市と協定”. 朝日新聞デジタル. (2021年5月21日) 2024年3月10日閲覧。
- ^ “新球場からスター選手巣立って 阪神2軍施設「ゼロカーボンベースボールパーク」建設キーマン・遠藤孝治工事所長を直撃”. デイリースポーツ. (2024年9月3日) 2024年10月12日閲覧。
- ^ a b 『阪神タイガースファーム施設(二軍本拠地)の尼崎市への移転が正式に決定』(プレスリリース)阪神タイガース、2021年12月22日 。2024年3月4日閲覧。
- ^ “タイガースの新二軍本拠地、甲子園と同方位、同サイズに 内野は黒土、外野は天然芝 神戸新聞”. 神戸新聞. (2021年11月29日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “尼崎の二軍新球場建設現場に阪神OBが集結「すごい施設ができるんやな」と糸井SA 藤川、岩田氏も来年3月の会場を心待ちに”. デイリースポーツ. (2024年3月1日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “阪神に“世界一”の育成施設 2軍新球場に大谷「50-50」生んだ動作解析機器導入”. スポニチアネックス (2024年12月26日). 2025年1月22日閲覧。
- ^ “スポーツデータの分析サービスビジネス拡大に向け、KinaTrax, Inc.を買収”. ソニー株式会社 (2024年10月16日). 2025年1月22日閲覧。
- ^ 『月刊タイガース』2024年5月号「新ファーム本拠地 ゼロ カーボン ベースボール パーク通信」第2回 (pp.38 - 39)
- ^ 『月刊タイガース』2024年9月号「新ファーム本拠地 ゼロ カーボン ベースボール パーク通信」第6回 (p.39)
- ^ 「阪神、2軍新球場には飲食売店設置 虎風荘シェフ監修の「虎風荘カレー」や平田2軍監督とのコラボメニューも」『中日スポーツ』2025年2月20日。2025年3月30日閲覧。
- ^ “【阪神】二軍新施設で起工式 25年3月完成予定、電車内から無料観戦もできる?”. 日刊スポーツ. (2023年5月18日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “「新虎の穴」に輝ネット誕生!阪神佐藤輝明の打球飛距離に合わせ設計見直し”. (2021年12月23日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “阪神二軍の新本拠地は甲子園そっくりなグラウンド 25年2月から使用へ”. (2021年11月26日) 2024年3月10日閲覧。
- ^ 阪神タイガース2軍新本拠地お披露目 岡田顧問も祝福 サンテレビ、2025年2月20日
- ^ "ゼロカーボンベースボールパークパートナー契約に合意しました。~環境に優しい持続可能な社会の実現と新たなベースボール文化の創出~" (PDF) (Press release). 阪神電気鉄道株式会社、株式会社阪神タイガース、日鉄鋼板株式会社、株式会社熊谷組. 22 February 2023. 2024年3月2日閲覧。
- ^ “日鉄鋼板 2%マグネシウム添加 アルミ・亜鉛合金めっき鋼板「エスジーエル」”. 日鉄鋼板. 2024年3月2日閲覧。
- ^ “阪神二軍新球場は脱炭素化&新素材使用で若虎躍動をアシスト 百北球団社長「SGLと呼んで」”. スポーツニッポン. (2023年2月22日) 2024年3月2日閲覧。
- ^ a b “2025 年阪神タイガース主催「日鉄鋼板 SGLスタジアム 尼崎」開催試合~~ 一般入場券発売について ~~” (pdf). ゼロ カーボン ベースボール パーク. 阪神タイガース (2025年1月24日). 2025年3月30日閲覧。
- ^ 『阪神甲子園球場で回収したビールカップの再生繊維をクッション材に使用した特別仕様の座席を導入します』(プレスリリース)阪急阪神ホールディングス、2024年9月26日 。2024年10月12日閲覧。
- ^ 【鳴尾浜ヒストリー】#阪神鳴尾浜球場 の功績を後世に!1994年の竣工以来、長きにわたり若虎育成の場としての役割を果たしてきた鳴尾浜球場の歴史をお届けします!
- ^ 「2軍新球場でこけら落とし ファン熱視線、外野席も開放―プロ野球・阪神」『時事ドットコム』時事通信社、2025年3月1日。2025年3月30日閲覧。
- ^ 「【阪神】新球場初勝利!教育Lで育成福島圭音サヨナラ打「尼崎から甲子園へ一生懸命やっていく」」『日刊スポーツ』2025年3月2日。2025年3月30日閲覧。
- ^ “2025年度 ウエスタン・リーグ公式戦 全試合日程PDF版(2025年1月17日 発表)”. 日本野球機構 (2025年1月17日). 2025年1月22日閲覧。
- ^ “2025年3月14日 【ファーム】 試合結果 (阪神vs広島東洋)”. 日本野球機構. 2025年3月30日閲覧。
- ^ 「【阪神】山田脩也が記念の新球場1号アーチ! プロ2年目での公式戦初本塁打で大物への第1歩」『日刊スポーツ』2025年3月20日。2025年3月20日閲覧。
外部リンク
- ゼロカーボンベースボールパーク - 阪神電気鉄道(特設サイト)
前本拠地: 阪神鳴尾浜球場 1995 - 2024 |
阪神タイガース二軍の本拠地 2025 - 現在 |
次本拠地: n/a - |
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