日本近海のウツセミガイを独立種とする意見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/29 19:34 UTC 版)
「ウツセミガイ」の記事における「日本近海のウツセミガイを独立種とする意見」の解説
21世紀初頭では西太平洋からインド洋に分布するウツセミガイ属の種はすべて Akella soluta として扱うのが一般的である。しかし黒田徳米(1947)は、日本産のものは「小形ニシテ螺塔隆マルコトナク、体層ハ円筒形ニシテ、軸縁ノ開キ広ク体層ヘ弱ク縊ルル」点で南方の A. soluta とは異なるとして、和歌山市沿岸に打ち上げられた標本に基づき Akera constricta Kuroda, 1947 と名付け新種として記載した。しかし後には自ら命名した A. constricta を A. soluta の新参異名として扱い、両者は区別できない同一種であるとの考えを事実上示した(黒田・波部、1965)。 これに対し堀越(1989)は、日本産はやはり別種であるとし、黒田本人が異名とした A. constricta Kuroda, 1947の学名を復活適用し、南方の A. soluta には新たにジャガタラウツセミガイという和名を与えて区別した。それによればジャガタラウツセミガイは東南アジアからオーストラリアに分布し、日本のウツセミガイに比べて大型になり、螺塔は高まって側面からもよく見え、体層は膨れず、殻口が四角く広がることで識別できるとしており、1947年時点での黒田の考えをほぼ踏襲している。 しかし日本産が別種であるか否かとは無関係に、「Akera constricta」という学名は既にアメリカテキサス州の白亜紀の化石種 Akera constricta Stephenson, 1941(殻高9mm、殻径6.5mm) に先取されており、黒田の A. constricta は一次新参同名(発表時点で既に同じ学名が別に存在している状態)のため無効名である。したがって日本近海のものを別種として扱う場合には以下のようになる。 ウツセミガイ Akera sp. (A. constricata Kuroda,1947 non Stephenson, 1941) 日本(房総半島および九州西岸以南)に分布。 ジャガタラウツセミガイ Akera soluta (Gmelin, 1791) インド太平洋(東南アジアからオーストラリア、インド洋)に分布。 ただし日本産のウツセミガイを別種として分ける考え方は必ずしも受け入れられてはおらず、和歌山県産のものでも殻高が28mm以上になると螺塔の突出が認められることから、黒田(1947)が「小形ニシテ螺塔隆マルコトナク」として記載に用いた殻高25mmのものは、単なる小形個体であった可能性が指摘されている。
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