新たな水産資源として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 14:32 UTC 版)
トロール網による底引き網漁では、目当ての高級魚と共に大量の深海魚が水揚げされることも多い。練製品として利用される一部の底生魚(ソコダラ類など)を除き、従来は市場価値がないことから廃棄されていた深海魚も、地産地消の一環として各地で食用化が進められている。 たとえば、駿河湾北東部は海岸近くから急激に深くなるため、ここに面する静岡県沼津市の沼津港や戸田(へだ)漁港などにはさまざまな深海魚が水揚げされる。このため沼津市では沼津港深海水族館が開設されたり、伊豆市などを含む西伊豆地方で深海魚料理をアピールしたりと、観光資源としても活用されている。食用となる身が少ない種類もあるが、戸田漁港の飲食店主によると、全体としては脂が乗って、ふっくらとした食感の深海魚が多いという。 1970年代以降、新たな漁業資源として利用可能な深海魚の探索が、日本の調査船によって活発に進められている。水産庁が1977から1979年にかけて北洋トロール船による深海資源調査を実施したほか、海洋水産資源開発センター(現・水産総合研究センター)の調査船「深海丸」は1970年から20年にわたって世界各地の深海漁場開発を行った。これらの調査の結果見出されたメルルーサ・マジェランアイナメなど多くの有用魚種が、輸入食用魚として一般に利用されるようになっている。しんかい2000などの潜水調査船もまた、キチジ・ハタハタなど深海性水産魚種の資源量調査や生態解明に携わっている。 以上のようなトロール船調査によって開発された深海魚の多くは底生魚である。一方で、中層に莫大な資源量を持つハダカイワシ類もまた、世界的な食料需要の増大を支えるエネルギー源として注目されている。ハダカイワシの仲間は過剰脂質のため食用には向かないと考えられてきたが、多くの種類では一般的な食用魚種と変わらない脂質組成を持つことが報告されている。中深層遊泳性深海魚の総生物量は少なくとも9.5億トンに上ると見積もられており、これらの豊富な未利用資源を活用する方法が探られている。
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