文学、映画上の狼男
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 06:47 UTC 版)
文学的には中世ヨーロッパの宮廷文学において題材にしばしば取り上げられた。フランス最古の女流作家と言われているマリー・ド・フランスの作品にLai du Bisclavret(ビスクラレッド/狼男)と呼ばれる作品があり、呪いを受けて半分を森の中で狼の姿で生きなければならない騎士が、夫を狼の姿のままにして不義を行おうとする妻の姦計を逃れて人間の姿を取り戻すという話である。 19世紀にイギリスのフレデリック・マリアットが書いた作品集『ファントム・シップ』(The Phantom Ship)にも『ハルツ山の白狼』/『人狼』(The White Wolf of the Hartz Mountains)という物語が採録されており、これが近代狼男文学の祖とされている。 無声映画時代にも狼男を扱った映画は存在していたが、人間が消えると代わって本物の狼が画面に出現するなど、質の高いものとは言えなかった。1935年に、世界初の狼男を主題とした本格的な映画『倫敦の人狼』(Werewolf of London)が公開されて特殊メイクによる半人半狼の狼男が登場し、続いて1941年に公開された『狼男の殺人』/『狼男』(The Wolf Man )は更に精巧な特殊メイクによる狼男の登場に加えて、『倫敦の人狼』で導入された「狼男に噛まれた者は狼男になる」「銀で出来たもので殺せる」などの設定が加えられた。 半人半狼の狼男や満月の夜に変身という物語は以前にも存在したが、『倫敦の人狼』・『狼男の殺人』以前においては数多くある狼男の話では少数に属し、銀で殺せるというのは『狼男の殺人』のオリジナルとされている。この作品により、現代における「狼男」伝説の基本要素を完成させ、「狼男映画の決定版」とまで評価された。このため、この両作品の設定が狼男の一般的な特徴であるという誤った認識のもとで、多くの作品が創作されることになった。 このため、この両作品の公開を狼男の歴史に関するひとつの画期として捉え、この作品以後に登場する狼男を『狼男の殺人』の原題より「ウルフマン」と称し、それ以前の伝説や民間伝承における「ワーウルフ」と区別する考えも存在する。
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