損害保険契約の法的性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 08:11 UTC 版)
「損害保険契約」の記事における「損害保険契約の法的性質」の解説
損害保険契約は双務契約である。保険契約が成立すると、保険者は一定期間内において条件付きで保険給付支払義務(危険負担義務)を負い、契約者は保険料支払義務を負う。債務不履行の場合には民法の一般原則が適用されるが、なかには同時履行の抗弁(民法533条)など、約款で修正されるものがある。 損害保険契約は有償契約である。保険契約では、保険者の提供する危険負担給付と保険契約者の支払う保険料給付とが対価的な関係にたっている。 損害保険契約は諾成契約である。保険契約を締結する場合、個人・企業が「申し込み」の意思表示を行い、保険者がそれを受け入れる「承諾」の意思表示をすれば、契約が成立する。ただし、保険者に保険責任が生じるためには約款上、保険料の支払いを要するとしていることが多く、要物契約(当事者の合意だけでなく目的物の交付によって成立する契約。ここでは保険料の支払いが目的物)と誤解されることが多いが、保険契約を要物契約と規定する法律は存在しない。 損害保険契約は不要式契約である。保険契約を締結するための申し込みの意思表示は、口頭でも文書でもよく、特別の方式は法律で定められていない。ただし、保険者は、損害保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、保険法6条各号に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない(保険法6条)。 損害保険契約は射倖(しゃこう)契約である。射倖契約とは、当事者の一方または双方の契約上の義務が具体化するか否か、またはその大小いかんが偶然の約束事によって左右されることを本質とする契約のことをいう。保険契約者が負担する保険料支払債務が確定債務であるのに対して、保険者の負担する保険給付支払債務は条件付きの債務となっている。少額の保険料で高額の保険給付が得られる可能性がある損害保険契約は、この射倖契約の性質があるため、例えば保険金目当ての犯罪に結びつくなどの公序良俗に反することのないよう、次の規制により、契約者・被保険者に対して高度な善意および信義誠実が要請されている(この点を評して、保険契約は最大善意の契約と呼ばれている)。被保険者が被保険利益を有しないときは、損害保険契約は無効 保険契約者又は被保険者になる者は、契約締結時に、重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたものを告知する義務を負う(保険法4条) 保険者は、保険契約者又は被保険者の故意又は重過失によって生じた損害をてん補する責任を負わない(保険法17条)。ただし個別商品において、約款で重過失は免責としないものがある 損害保険契約は附合契約である。保険契約を締結する場合、具体的な契約内容について保険会社と自由に交渉する余地は特に個人保険の場合ほとんど残されておらず、契約者は保険者が一方的に作成した契約内容(保険約款)を包括的に承認するか、拒絶するかの選択しかない。複雑で大量の商品を、簡易・迅速かつ安全に取引するために、契約自由の原則(内容の自由)が制限され、契約が定型化、標準化されている。
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