推理小説誕生の前提となる社会状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 00:09 UTC 版)
「推理小説」の記事における「推理小説誕生の前提となる社会状況」の解説
世界初の推理小説は、一般的にはエドガー・アラン・ポーの短編小説「モルグ街の殺人」(1841年)であるといわれる。しかし、チャールズ・ディケンズもポーに先立ち、同年1月から連載を開始した半推理・半犯罪小説の『バーナビー・ラッジ』(1841年)を書いているほか、100年ほど前に書かれたヴォルテールの『ザディグ』(1747年)の一編『王妃の犬と国王の馬』も推理に重きが置かれている。さらには『カンタベリー物語』、『デカメロン』、聖書外典『ダニエル書補遺』の『ベルと竜』などにも推理小説のような話が収録されており、どこに端を発するかという議論は尽きない。 ただ、確実に言えるのは、1830年代のイギリスに警察制度が整い、犯罪に対する新しい感覚が生まれたということである。この頃一世を風靡した『ニューゲイト小説』(英語版)は、ニューゲート監獄の発行した犯罪の記録『ニューゲート・カレンダー』を元に書かれた犯罪小説であり、後の近代推理小説が生まれる基盤を作ったと言える。 権利と義務の体系が整い、司法制度や基本的人権がある程度確立した社会であることも、推理小説に欠かせない要素であろう。 推理小説というジャンルにとって警察組織の存在は大きい。法を手に犯罪者を捕らえる新しい形のヒーローが誕生したからである。その裏側には、急速に都市化が進むイギリスで、一般市民が都市の暗黒部に対し抱く不安が高まっていた、という歴史的事実がある。そして都市化に伴うストレスのはけ口として、「殺人事件」という素材の非日常性が必要とされていたという見方もある。
※この「推理小説誕生の前提となる社会状況」の解説は、「推理小説」の解説の一部です。
「推理小説誕生の前提となる社会状況」を含む「推理小説」の記事については、「推理小説」の概要を参照ください。
- 推理小説誕生の前提となる社会状況のページへのリンク