懲役
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懲役(ちょうえき)とは、自由刑に作業義務による区分を設けている法制度において所定の作業義務を課すことを内容とする刑罰である。作業義務のない禁錮や拘留と区分する。なお、アメリカ合衆国の自由刑である Imprisonment やイギリスの自由刑である Custodial Sentence などの刑は公的な資料などでは「拘禁刑」と訳される[1]。これらの自由刑にも刑務作業が定められている場合があり便宜的に「懲役」と訳されることもあるが、日本などの懲役刑とは異なり刑務作業は刑罰の内容として位置づけられているわけではない[2](後述)。
注釈
- ^ 2005年(平成17年)1月1日の改正刑法の施行前は、有期懲役は原則として1か月以上15年以下、刑を加重する場合においては最長20年までと定められていた。
- ^ 更生保護法の施行以前は「仮釈放、仮出場及び仮退院ならびに保護観察等に関する規則」32条が同様の規定を置いていたが、そこでは、悔悟の情及び改善更生の意欲、再び犯罪をするおそれ、相当性、社会の感情の4つを「総合的に判断」するものとされていた。
- ^ 「無期」「無期限」という言葉には「期限が不確定である」という意味と、「期限が無く永久に続く」との2つの意味がある。一般的に、無期謹慎・無期限活動休止は前者、無期懲役・無期公債・無期限在留カードは後者を意味する。「大言海」を参照。
- ^ 英語で表現する場合も「life imprisonment with work」(直訳すれば「一生涯の拘禁、労働付き」となる)との語が充てられている。「平成21年3月改訂版法令用語日英標準対訳辞書」p.282参照。
- ^ 同条は、「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる」と規定しており、この文面が示すとおり、仮釈放は義務的なものではなく、可能性にとどまるものであって、制度上将来的な仮釈放が前提として保証されているわけではなく、また「10年」「3分の1」とは最短の場合を表すものである。
- ^ 仮釈放の際の遵守事項には、各対象者に共通する一般遵守事項(更生保護法51条)と個別に定められる特別遵守事項(更生保護法52条)とがある。
- ^ 無期懲役の仮釈放が取り消されるのであるから、もちろん無期懲役の受刑者として刑務所に戻されることとなる。なお、刑法28条所定の期間は初度の仮釈放の条件と解されており、仮釈放の取り消しによって収監されている無期懲役受刑者は、再収監の時点で刑事施設の通算在所期間が既に10年以上となっているため、(仮釈放の取り消しに加えて新たな刑を受けている場合を除いて)法務省令所定の仮釈放の許可基準に適合すれば、理論上はいつでも再度の仮釈放が可能である。110号までの矯正統計年報と森下忠「刑事政策大綱 新版第2版」(成文堂、1996年(平成8年)7月)。ISBN 4-7923-1411-9 を参照。
- ^ 同条はその対象を「罪を犯すとき」ではなく「少年のとき」と規定しており、このことから、犯時ではなく判時が基準となり、判時に成人に達している場合は対象外となる[21]。
- ^ 2002年(平成14年)から2011年(平成23年)までの無期刑受刑者の仮釈放審理件数171件に対し、検察官の意見照会がなされた事例は140件であり、必ずしもすべてのケースにおいて検察官の意見照会がなされていたわけではなかった[20]。
- ^ 1999年(平成11年)から2008年(平成20年)までの無期刑受刑者の仮釈放審理件数91件に対し、複数委員による面接が行なわれたのは4件にとどまり、1人の委員による面接が通常であった[20]。
- ^ 従前から、仮釈放の申出は刑事施設の長の申出のほかに、申出によらない地方更生保護委員会の独自権限の行使によってもできるものとなっていたが、実際は刑事施設の長の申出のみによって審理が行なわれていた。それゆえ、申請が刑事施設側の恣意に委ねられていた面があり、審理の機会の保証という面に欠けていたとされる。[要出典]
- ^ なお、有期刑の受刑者の仮釈放審理にあたっては、このような事務の運用に関する通達がなされていないため、単独の委員による面接で仮釈放を許せ、被害者や検察官への意見照会を行なわず仮釈放を許すこともできる。
- ^ それを認めない場合、仮釈放制度をともに廃止するか、無期刑受刑者を仮釈放できるまでの期間を30年に引き上げるかの選択となる。ここで後者を選択する場合、無期刑と30年の有期刑で仮釈放を許せる最短期間に20年の差が生じ、仮にこの差を解消しようとすると、「3分の1」という有期刑の仮釈放の条件を引き上げることが考えられるが、その場合短期の刑を含む有期刑全体の整合性を考える必要が生じ、議論はもはや無期刑だけの問題にとどまらなくなり、刑事拘禁政策全体の議論となる[要出典]
- ^ なお、有期刑の上限引き上げの立法趣旨については、近年の犯罪情勢や国民感情の変化や平均寿命の延びなどを踏まえ、適切な刑を科すことができるようにするために必要であるという説明に加え、有期刑と無期刑との間で、仮釈放の資格が得られるまでの期間に連続性を持たせることにも配慮したと説明されている[34]。
- ^ 他にも、元刑務官で作家の坂本敏夫が「(仮釈放のない無期刑の受刑者は)仮釈放の希望もなく死を待つだけの存在であり、彼らの処遇は死刑囚並に難しく、刑務官の増員がなければ対応は困難」と主張し、精神面からも対応困難な受刑者を増やすだけとしている[37]。
- ^ 坂本敏夫は、国家が負担する受刑者一人当たりの年間予算は50万円であり、高齢化すれば嵩んでくる仮釈放のない無期懲役受刑者の医療費も、また死後の埋葬料も全額国家負担の必要が生じるなどに関して、具体的な議論が必要であるとしている[37]。また、元・検察官の河上和雄は「(死刑廃止に伴う)絶対的無期刑は、脱獄の為(ため)に人を殺しても死刑にならないから、刑務官を殺す可能性もある」と主張している[38]。
- ^ もっとも、そのような翻訳は報道機関や十分な概念理解を有しないものによってなされており、法務省刑事局「法律用語対訳集-英語編」p.179、ベルンド・ゲッツェ「和独法律用語辞典」成文堂(2007年(平成19年)10月)p.379。ISBN 978-4-7923-9166-9、直野敦「ルーマニア語分類単語集」大学書林(1986年(昭和61年)8月)p.144、山口俊夫編「フランス法辞典」東京大学出版会(2002年(平成14年)3月)p.715。ISBN 978-4-13-031172-4、法務省刑事局外国法令研究会「法律用語対訳集-フランス語編」p.190、稲子恒夫「政治法律ロシア語辞典」ナウカ出版(1992年(平成4年)2月20日)p.302。ISBN 9784888460279、などにおいてはいずれも「無期懲役」「無期刑」「無期拘禁」「無期自由刑」と訳されている。最高裁判所発行の「法廷通訳ハンドブック」でも同様であり、たとえば米国人が日本の裁判所で無期懲役の判決を受ける場合、通訳から「life imprisonment」と告げられる。
- ^ ヨーロッパ語圏では、英語の「life」にあたる語が用いられている。
- ^ ただし、これはあくまで「可能性」であり、制度上将来的な仮釈放が前提として保証されているわけではない。
- ^ ただし、特別の判決により22年まで延長することができる。また、15歳未満の児童を殺害し、その前後または最中に強姦などの野蛮行為を行った者に限っては特別の判決をもってこれを最大30年まで延長でき、また仮釈放を認めない旨の決定もできるという特例がある。ただし、後者の場合でも30年を経過した時点で裁判所組織の頂点に位置する破棄院に医学の専門家による鑑定を申請し、この決定を取消すことができる。
- ^ ただし第1級殺人および再度の第2級殺人の場合である。第2級殺人の場合は、仮釈放申請の資格を得る期間を裁判所が10年から25年の範囲内において決定するものとされている。
- ^ たとえば、中国刑法81条は、無期刑の仮釈放条件期間を10年としているが、1997年の刑法改正により、「暴力犯罪および累犯により無期懲役または10年以上の有期懲役に処せられた者に関しては、仮釈放を許すことはできない」とする規定が設けられているし(不得假釋无期徒刑)、オランダにおいては有期刑の受刑者にしか仮釈放の可能性を認めていない。米国においては、多数の州において、仮釈放のない無期刑 (life imprisonment without parole) が存在し、また、英国においても、量刑ガイドライン附則21章により、「極めて重大な謀殺であると認められる事案について、生涯仮釈放資格を得ることができない旨の言渡しをすることができる」と規定されている。
出典
- ^ “諸外国の制度概要(資料1)”. 法制審議会. 2018年5月5日閲覧。
- ^ a b c “第2回行刑改革会議”. 法務省. 2018年5月4日閲覧。
- ^ a b c d “諸外国の制度概要(資料6)”. 法制審議会. 2018年5月4日閲覧。
- ^ 世界の長い懲役刑・禁固刑・求刑・刑期の一覧
- ^ ネズミ講で懲役14万1078年!タイ人女詐欺師チャモーイ・ティプソー【TVウォッチング】
- ^ 強盗強姦:性的暴行15件、合計懲役47年−−大阪地裁判決 毎日新聞 2013年(平成25年)6月22日
- ^ 検察統計年報・「審級別確定裁判を受けた者の裁判の結果別人員」
- ^ 井口克彦「日本の刑務作業は「強制労働」か?」『CPR News Letter』第8巻、監獄人権センター、1996年2月、2009年3月2日閲覧。
- ^ “強制労働ニ関スル条約(第29号)”. 国際労働基準 - ILO条約・勧告. ILO駐日事務所 (2005年7月25日). 2009年3月2日閲覧。
- ^ 荒木伸怡 (2004年6月24日). “施設内処遇 - その2”. サイバーラーニング. 立教大学. 2009年3月2日閲覧。
- ^ 刑務作業のあらまし 矯正局
- ^ 石川淳一 (2009年2月28日). “刑務作業:企業の発注、相次ぐ解約 不況余波、刑務所にも”. 毎日新聞 2009年2月28日閲覧。
- ^ 森達也『死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う』(初版)朝日出版社(原著2008年1月20日)、218頁。ISBN 9784255004129。
- ^ “令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第5節/2 3-1-5-1図 出所受刑者人員・仮釈放率の推移”. 法務省 (2019年11月). 2020年4月27日閲覧。
- ^ “令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第5節/2 3-1-5-2図 定期刑の仮釈放許可人員の刑の執行率の区分別構成比の推移等”. 法務省 (2019年11月). 2020年4月27日閲覧。
- ^ 「無期刑及び仮釈放制度の概要について」
- ^ 「条解刑法」弘文堂(第2版、2007年(平成19年)12月)p.27。ISBN 978-4-335-35409-0。清原博「裁判員 選ばれる前にこの1冊」自由国民社(初版、2008年(平成20年)12月4日)p.153。ISBN 978-4-426-10583-9。司法協会「刑法概説」(第7版)p.155。
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- ^ 「注釈少年法 第3版」(有斐閣、2009年(平成21年)6月)。ISBN 978-4-641-04259-9。
- ^ 再度の仮釈放者を除く。
- ^ 法務省『昭和48年版犯罪白書 第二編 犯罪者の処遇 第3章 仮釈放及び更生保護 第1節 仮釈放 2 仮出獄 II-85表 無期刑仮出獄者の在監期間(昭和45年~47年)』(JPG)(レポート)1973年10月 。2020年4月12日閲覧。
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- ^ 矯正統計年報
- ^ 1985年(昭和60年)5月31日付中日新聞社会面による。
- ^ “NHKが追った『日本一長く服役した男』61年ものあいだ刑務所にいた囚人の最期” (日本語). 日刊サイゾー. (2020年10月14日) 2021年1月11日閲覧。
- ^ 法務省『令和元年版犯罪白書 第3編/第1章/第5節/2 3-1-5-3表 無期刑仮釈放許可人員の推移(刑の執行期間別)』(Excel)(レポート)1919年11月 。2020年4月27日閲覧。
- ^ 法務省『昭和48年版犯罪白書 第二編 犯罪者の処遇 第3章 仮釈放及び更生保護 第1節 仮釈放 2 仮出獄 II-85表 無期刑仮出獄者の在監期間(昭和45年~47年)』(JPG)(レポート)1973年10月 。2020年4月12日閲覧。
- ^ 法務省『昭和45年版犯罪白書 第二編 犯罪者の処遇 第三章 仮釈放および更生保護 一 仮釈放 3 仮釈放決定の状況 (二) 仮出獄決定の状況 II-91表 無期刑仮出獄者の在監期間(昭和42~44年)』(JPG)(レポート)1970年10月 。2020年4月12日閲覧。
- ^ 現場近くに臨時作業員「いたずら騒がれ」と自供『朝日新聞』1979年(昭和54年)9月10日朝刊 13版 23面
- ^ 「無期刑受刑者の仮釈放審理に関する事務の運用について(法務省保護観第134号)」
- ^ 110矯正統計年報による。
- ^ 第161回国会 法務委員会第5号
- ^ 110号までの矯正統計年報による。
- ^ 朝日新聞2008年6月5日掲載の保岡興治元法務大臣の発言
- ^ a b 朝日新聞2008年(平成20年)6月8日の『耕論』
- ^ 毎日新聞の論説による
- ^ 「大韓民国刑法典」 (朝鮮語)
- ^ 「ドイツ刑法典」(ドイツ語)
- ^ 「オーストリア刑法典」 (ドイツ語)
- ^ 法務大臣官房司法法制調査部「フランス新刑法典」法曹会(1995年)
- ^ 「ルーマニア刑法典」 (英語)
- ^ A・Jシュヴァルツ著/西原春夫監訳「ポーランドの刑法とスポーツ法」成文堂(2000年5月)。ISBN 978-4-7923-1525-2。
- ^ 「ロシア刑法典」(英語)
- ^ 「カナダ刑法典」 (フランス語)
- ^ 「台湾刑法典」 (中国語)
- ^ 「イタリア刑法典」 (イタリア語)
- ^ たとえば、第165回国会法務委員会第3号、第154回国会 参議院 法務委員会 第9号 平成14年4月11日、2008年(平成20年)6月5日付朝日新聞「あしたを考える」掲載の法務省資料。
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