恐竜の肺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 01:15 UTC 版)
鳥類は獣脚類の恐竜から分岐して進化した。現存鳥類の呼吸システムを、獣脚類(もしくは恐竜全体)が既に持っていたという仮説があり、研究がすすめられている。2005年には、マジュンガサウルスの脊椎骨の構造の研究から獣脚類が気嚢を持つ証拠が提出され、この仮説の実証が前進した。 中生代に恐竜が哺乳類よりも繁栄を成功させたのは、この呼吸システムのためとも言われており、古生代末から中生代はじめにかけての低酸素時代(火山活動の増大による大気中の二酸化炭素濃度の増大による)にこの形質が著しく適応的な形質となって、恐竜の台頭を招いたのではないかとの仮説も提唱されている。 これに対し哺乳類は横隔膜を発達させた(ただし、いつ獲得したのかは判明していない)。哺乳類の先祖たる単弓類が一番栄えたのは2億9900万年前から2億5100万年前頃であり、石炭紀には木材のリグニンを分解できる菌類(白色腐朽菌)が十分に進化しておらず大量の炭素が石炭として固定化され、ペルム紀初期の酸素濃度は35%にも達した。その後、二酸化炭素低下による寒冷化に伴う植物の炭素固定能の減退及び菌類によるリグニンの分解などによりジュラ紀前期の2億年前には酸素濃度は12%まで低下。呼吸効率に劣っていた単弓類は、このころまでに大部分が絶滅。恐竜という強力な競合相手が絶滅するまで、哺乳類の祖先は日陰者としての生活を余儀なくされた。 なお2013年、トカゲやワニなど恐竜以外の爬虫類も、気嚢こそ持っていないが「空気の流れが一方通行の肺」は持っているという発表がなされた。だとすれば「一方通行の肺」は、現生爬虫類の先祖たる双弓類が単弓類と別れた後、比較的早期に獲得したものであり、気嚢とはそれに付け加えられた洗練だったことになる。
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