心臓サルコイドーシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 10:24 UTC 版)
「サルコイドーシス」の記事における「心臓サルコイドーシス」の解説
サルコイドーシス患者における心臓病変の頻度は、5~10%程度とされている。サルコイドーシス剖検例の20~27%に心サルコイドーシスが認められ、生前の診断率は40~50%程度である。心サルコイドーシスと診断されていないサルコイドーシスの患者も、精査をすると40~50%程度に心サルコイドーシスが見れられるとも言われたり、高齢の日本人女性の場合は80%程度が心サルコイドーシスを合併していると言われたりするなど、その合併頻度に関してはバラつきが多い。 心サルコイドーシス診断には、心電図、ホルター心電図、心シンチグラフィィ、MRI、心臓カテーテル、心筋生検、PETなどを用いるが、示す病像が病期や重症度に応じて多岐に及ぶため診断は容易ではない。例えば、心筋生検を行うと、病変部が採取できていれば、乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を始め、ラングハンス型巨細胞(星芒小体やSchaumann小体を持つ)、異物型巨細胞やリンパ球浸潤が認められる。しかし、サルコイドーシスは結節性の疾患であり、心筋内に散在性に病変が認められるため、心筋生検を行っても、心サルコイドーシスの病変部が含まれない可能性もある。また、心筋生検を行った事が不整脈を誘発し得るので、注意を要する。採取したサルコイドーシスの心筋を電子顕微鏡で観察すると、心筋内毛細血管の基底膜の多層化が認められ、ミクロアンギオパチーの機序による病態も提唱されているが、この所見は糖尿病でも認められサルコイドーシスに特異的ではない。 心サルコイドーシスは、重症心不全や致死的不整脈を引き起こし得て、サルコイドーシスによる死因として上位の合併症である。心サルコイドーシスによる不整脈は、脚ブロックや房室ブロックから洞不全症候群などの致死性不整脈まで進行する場合もある。 サルコイドーシス関連心不全を呈する患者の心臓は、拡張型心筋症(DCM)を呈するのが一般的である。ただし、日本では特発性DCMの5年生存率が64%である一方で、心サルコイドーシスの5年生存率は37%と低い。2006年に改訂されたサルコイドーシスの診断基準と診断手引では、心臓サルコイドーシスに比較的特徴的である完全房室ブロック、心室中隔基部の菲薄化、心臓へのガリウムの異常集積、左室収縮不全が主徴候とされ、新たに造影MRIの遅延増強所見が加えられた。遅延増強効果は、活動性炎症部位の評価や、ステロイド系抗炎症薬投与による治療効果の判定にも有効である。心サルコイドーシスのステロイド系抗炎症薬の全身投与の適応は、高度房室ブロック、心室頻拍などの重症心室不整脈、局所壁異常運動、あるいはポンプ失調とされている。その治療効果は房室ブロックでは伝導障害が改善し正常化する例が有り、低心機能例では収縮能は改善しないまでもそれ以上に悪化しない例が多い。また低収縮に至る前に治療を行った場合は、改善する例も知られている。ステロイドの投与量はPSL30mg/dayまたは60mg/2dayが推奨されている。4週間投与したのち、2~4週間毎に漸減していくことが多い。ステロイドの中止に関しては明確な規定は存在しないが最終的にPSL10mg/day程度での維持療法を行う場合が多い。 なお、重症不整脈に関してはペースメーカー、カテーテルアブレーション、植え込み型除細動器などが用いられる。
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