少年事件捜査の特殊性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 07:03 UTC 版)
「少年保護事件の係属」の記事における「少年事件捜査の特殊性」の解説
前述したとおり検察官の送致が犯罪少年の係属態様の大部分を占めるといっても、実際には司法警察職員がほとんどの事件を捜査しており、司法警察職員が捜査を遂げた後、司法警察員が検察官に事件を送致し(刑事訴訟法246条本文、犯罪捜査規範210条)、送致を受けた検察官が家裁に事件を送致することに変わりはない。 親記事でも述べたとおり、少年の刑事事件については、特に定めるもののほか、一般の例によるので(同法40条、犯罪捜査規範202条)、事件の認知(捜査機関が事件の存在を認識すること)や捜査について、成人の刑事事件との間で制度上の異なる点は少ない。 実務上重要な差異としては、親記事で触れた全件送致主義の採用と身柄拘束の制限のほか、伝聞法則(刑事訴訟法320条1項)の不適用(大阪高裁昭和28年1月16日決定家月5巻4号117頁、仙台高裁昭和63年12月5日決定家月41巻6号69頁。少年審判規則8条2項参照)がある。 このため、成人の共犯がいるとか証拠が不十分といった特段の事情でもない限り、検察官が自ら取調べをして調書を作成したり証拠収集をしたりする必要性は薄く、送致記録を検討するだけで独自の捜査をしないで家庭裁判所に事件を送致する例が多い。 少年の刑事事件の捜査については、少年の健全育成の見地から(犯罪捜査規範203条)、少年の特性にかんがみ、特に他人の耳目に触れないようにし、取調べの言動に注意する等温情と理解をもって当たり、その心情を傷つけないように努めなければならない(同規範204条)。また、家庭裁判所における審判その他の処理に資するという見地から(同規範203条)、犯罪の原因および動機ならびに少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等も詳細に調査しておかなければならない(同規範205条)。 その他、同規範は、関係機関との連絡(206条)、保護者またはこれに代わるべき者への連絡(207条)、報道上の注意(209条)について規定している。
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