対立する証言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/31 23:33 UTC 版)
「エンプレス・オブ・アイルランド」の記事における「対立する証言」の解説
事故について2つの異なった証言が得られている。 エンプレス・オブ・アイルランド側の証言 ポワント=オー=ペールで水先人を降ろした後、全速力で外洋を目指した。少し経って、右舷船首方向およそ10kmにストールスタッドのマスト灯が見えた。この時点では天候は快晴であった。しばらくした後、エンプレス・オブ・アイルランドは川を下る進路を取った。この時点ではまだストールスタッドのマスト灯は7、8km先に見えていた。そして船長は右舷対右舷で通過しようと考え、そこに衝突の危険性は無いものと判断した。しかし霧が立ち込めてくるとストールスタッドの右舷にある緑の航海灯はうっすらとしか見えなくなってきた。エンプレス・オブ・アイルランドは川の流れに逆らうため全速後進をして、その場にとどまり、合図として短い汽笛を3度鳴らした。約1分後、ストールスタッドの航海灯は霧に包まれ、完全に見えなくなった。その後ストールスタッドとさらに汽笛を交し合った後、エンプレス・オブ・アイルランドのほぼ右側100フィートに、高速で進んでくるマスト灯が見えた。衝突を回避あるいは最小限に食い止めようと全速前進を命じたが、時すでに遅く、船体中央にストールスタッドが衝突した。船長は衝突の原因はストールスタッドにあると明言した。事故後にストールスタッドの船長に最初に言った有名な言葉は「私の船を沈めたな!」であった。 ストールスタッド側の証言 エンプレス・オブ・アイルランドのマスト灯は最初、左舷方向6、7海里先に見えた。そのときはストールスタッドの右舷方向に進行していたという。数分後、エンプレス・オブ・アイルランドの右舷側の灯火が5から8km先に見え、その後エンプレス・オブ・アイルランドは進行方向を変えた。エンプレス・オブ・アイルランドの舷灯は右舷側の緑灯も左舷側の赤灯も見えるようになった。さらに右舷への転舵を続け、緑灯が見えなくなり、赤灯だけが見えるようになった。これは数分後に霧に隠されてしまうまで確認できた。この時点ではエンプレス・オブ・アイルランドはおよそ3km先にあり、その時ストールスタッドを操艦していた一等航海士は、十分な空間があったため左舷対左舷で通過することにしたのだろうと判断した。汽笛を交し合い、ストールスタッドは速度を落とし、キャビンで就寝中だった船長のアンダーソンをブリッジに呼んだ。彼がブリッジに到着するとストールスタッドの進路に交差するように緑色のマスト灯が進んでくるのが見えた。全速後進を命じたが、すぐに船は衝突した。
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