実際の事件との相違
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 21:18 UTC 版)
「八甲田山死の彷徨」の記事における「実際の事件との相違」の解説
この作品はノンフィクション小説として扱われることも多いが、実際には、事実を題材としながらも作者自身の解釈や創作が加えられたフィクションである。作品中では青森第5連隊と弘前第31連隊が共通の目的の下に協調して雪中行軍を計画したように描かれているが、これは事実ではない。実際には双方の計画は個別に立案されたもので、実施期日が偶然一致したにすぎない。また、作中で描かれる双方の指揮官の交流も新田の創作であり、両隊になんらかの情報交換があったか否かについては、現在残されている資料からは確認できない。人物描写の都合上メインとなる神田大尉(史実の神成文吉大尉)と山田少佐(史実の山口鋠少佐)の描写も、神田大尉寄りにかなり脚色されている。 本事件については、新田の小説に先行して、青森県の地元紙記者だった小笠原孤酒が長年にわたる資料収集や第5連隊の生還者(小原元伍長)への聞き取り調査などに基づいてまとめた書籍『吹雪の惨劇』が存在した。こちらは『八甲田山死の彷徨』とは違い、ノンフィクションを志向している。ただし、出版社を通さない私家本であるため、『八甲田山死の彷徨』に比べ知名度は低い。これを知って取材を申し入れた新田に対し、小笠原は資料提供や現地案内など多くの助力を提供した。新田もあとがきで小笠原に対する謝辞を記している。一方で、新田が作品中で遭難に至った青森第5連隊の行軍計画を「人体実験」と表現した点について、小笠原は大きなショックを受け、作品そのものについては否定的な評価を残している。小笠原の足跡などを記した書籍『八甲田死の雪中行軍真実を追う』(三上悦雄、河北新報出版センター)も存在する。
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