完全対
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 09:14 UTC 版)
詳細は「完全対(英語版)」を参照 スペクトル系列を作るための最も強力な方法は、ウィリアム・マッセイ(英語版)による完全対を使う方法である。完全対は特に代数的位相幾何学の分野でよく使われ、他の作り方が知られていないスペクトル系列が多く存在する。実際、全ての知られているスペクトル系列は完全対から作ることができる[要出典]。にも関わらず、(完全対は)抽象代数学ではあまり人気がなく、その分野ではほとんどのスペクトル系列はフィルターつき複体から得られている。完全対を定義するために、アーベル圏を1つとる。先程と同じく、応用上は大抵の場合環上の2重次数つき加群の圏である。完全対 とは、対象 A と C の対と、この対象間の3つの準同型: f : A → A, g : A → C and h : C → A であって、次の完全性の条件を満たすものを言う: Image f = Kernel g Image g = Kernel h Image h = Kernel f このデータを単に (A, C, f, g, h) と表す。完全対は三角形の絵で表現することが多い。A を補助的なデータとして使い、E0 項が C であるようなスペクトル系列を作ろう。 スペクトル系列の次のシートに行くために、導来対(derived couple)をまず作る。次の記号を準備する: d = g o h A' = f(A) C' = Ker d / Im d f' = f|A'、f の A' への制限 h' : C' → A'、h から誘導されるもの。h がこのような写像を誘導することは簡単に分かる。 g' : A' → C' は次のように定義する。A' の元 a に対して、A の元 b が存在して a は f(b) と書ける。g'(a) を、C' における g(b) の像として定義する。一般の状況では、g' はアーベル圏に対する埋込み定理の一つを使って作られる。 定義からすぐに (A', C', f', g', h') が完全対となることが分かる。C' をスペクトル系列の E1 項とする。この操作を繰り返して完全対の列 (A(n), C(n), f(n), g(n), h(n)) が得られ、C(n) を En 項とし、dn を g(n) o h(n) と置くことで、求めるスペクトル系列になる。
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