大黒屋婿入り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 20:03 UTC 版)
三五郎と別れて旅に出た畔倉は、途中の富士川べりの南部にある宿屋に宿泊していた。すると、数人の客が泊まりに来た。そのうちの一人の女性は、神奈川脇本陣で旅籠屋兼遊郭を経営する大黒屋重兵衛の後家・おときという名前である。数日後、おときたち一行が宿屋を出発しようと勘定した際、財布をどこかへ落としたことに気付く。焦るおときたちの様子を見ていた畔倉は、恩を売るために金を貸す。おときたちは畔倉に厚く謝辞を述べるが、その直後、大雨が降ってしまう。そこで畔倉は、おときを晩酌に誘い、おときも了承する。酒を飲むうちにおときは畔倉に好意を寄せるようになり、畔倉もそれを利用する。数日間を共に過ごすうちに、おときと畔倉は肉体関係を結ぶようになる。おときはすっかり畔倉のことで頭がいっぱいになり、結婚し畔倉は二代目大黒屋重兵衛となった。最初は奉公人たちの間で結婚に反対する者も多かったが、20代後半になる畔倉は人心掌握術も習得しており、次第に批判は消え、誰からも信頼されるような人物を演じ続けた。二代目大黒屋重兵衛を名乗ってから3年が過ぎた秋の夜、その大黒屋に2人の役人が尋ねてきた。聞くと、藤沢の千本杉で強盗殺人事件があり、犯人がこの近辺に逃走したとのことだった。役人が去った後、畔倉は大黒屋に宿泊している武士が犯人であると推理し、逃走の援助を申し出る。見返りとして強盗殺人の際に盗んだ金銭のうち一部を受け取った畔倉は、裏道を案内し武士を逃がそうとする。隙を見て畔倉はその武士を殺害し、残りの金銭も強奪する。家に帰った畔倉は、返り血を浴びた自身の着物を井戸で洗濯していた。すると、後ろから畔倉を呼ぶ声がした。ギョッとして畔倉が振り返ると、遊女の一人であるおふみがそこにいた。すぐに畔倉は笑顔を作り、転んでしまったために着物に付いた泥を落としていると説明する。しかしおふみは、着物に付着しているのが泥ではなく血であることを見逃さなかった。
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