園芸植物としてのエビネ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/12 02:23 UTC 版)
エビネ属には熱帯地方原産の種を中心に洋ランとして栽培されるものがあり、カランセあるいはカランテの名で流通している。また、日本産の種を中心とする温帯地方原産の種群はエビネ、時にエビネランと呼ばれ、近年では育てづらい原種個体に代わって、人工交配によるさまざまな園芸交配種が大量に生産されるようになっている。交配種についてはすでに園芸植物と言ってよい。 その一方で原種グループは、いまだ野生採取により市場供給されている種類が多く、園芸目的の採集が野生個体群に対する非常に大きな圧迫要因となっている。 日本のエビネ類が園芸上のジャンルとしてどこに属するかは、意見が分かれるところである。野生ランの一つとするには、人工交配が進み過ぎ、柄が大きすぎ、洋ランではあり得ない。かといって東洋ランとは歴史が違い過ぎるし、美意識にも解離がある。山野草の中のひとつ、というのがまずは無難な線と思われる。 日本産の種属は上に述べたように約20種あるが、そのうちエビネとして盛んに栽培されているのはエビネ、キエビネ、キリシマエビネ、ニオイエビネ、サルメンエビネなどの5種程度と、それらの雑種である。 南西諸島のオナガエビネやツルランなど亜熱帯産の種も栽培されるが、見た目も性質も上記の種群とはかなり異なる(オナガエビネ、リュウキュウエビネなどは耐暑性、耐寒性に欠け、初心者の栽培には適さない)ので、まとめては扱わず、やや異なるジャンルのものと見なされている。しかしこれらの南方系原種も相互に交配可能で、雑種にも種子ができる。一部の園芸業者によって品種改良もおこなわれており、優れた選別交配個体が流通している。またこれら亜熱帯産のグループと本土のナツエビネ、春咲きグループも交配が一応可能ではある。しかし雑種個体の稔性は低く、後代の自由な交配育種が難しいため、一般にはほとんど流通していない。
※この「園芸植物としてのエビネ」の解説は、「エビネ属」の解説の一部です。
「園芸植物としてのエビネ」を含む「エビネ属」の記事については、「エビネ属」の概要を参照ください。
- 園芸植物としてのエビネのページへのリンク