嘉喜門院集
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 16:40 UTC 版)
『嘉喜門院集』は嘉喜門院の私家集であり、天授3年/永和3年(1377年)7月13日に宗良親王が『新葉和歌集』を撰集する際の資料として、嘉喜門院の詠歌を求めたところ、女院がこれに応えて編纂したものである。阿野実為によって清書され、宗良親王へ提出された。親王は『嘉喜門院集』を再三閲覧した上でこれに加点を施し、読後の感想を消息文に認めているが、それによれば、天授3年の七夕に亡き後村上天皇を偲んで詠んだ長慶天皇との贈答歌が特に秀逸であると賞賛している。 家集の内容は、大きく分けて三部で構成されている。最初の部分は袖書と呼ばれ、上記に述べた当家集の成立事情と、女院と実為の贈答歌各2首、そして「内の御方」(長慶天皇)の御製2首が記載されている。その次は家集の本文であり、所収歌は全102首を数えるが、うち14組の贈答歌が含まれるため、女院本人の歌は88首、他人の歌が14首収録されていることになる。以上が宗良親王に提出された部分と推定され、本文の後には親王による消息文1篇と「詠三十首和歌」と呼ばれる30首が添えられている。この30首はかつて、女院が手本とするために収集した他人の作品とみられていたが、歌風や技法の検討からは本人の作とする説が有力である。 写本は、冷泉為尹の書写に係ると推定される尊経閣文庫本が唯一の古写本として貴重である。また、流布本には袖書を省略しているものが多い。 翻刻されたテキストは、『群書類従271』・『婦人文庫歌集』・『校註国歌大系14』・『私家集大成7』・『新編国歌大観7』などに収録されている。
※この「嘉喜門院集」の解説は、「嘉喜門院」の解説の一部です。
「嘉喜門院集」を含む「嘉喜門院」の記事については、「嘉喜門院」の概要を参照ください。
- 嘉喜門院集のページへのリンク