品詞分類の諸問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 06:12 UTC 版)
品詞を実際に分類するにはさまざまな問題がある。まず、すべての言語に当てはまる品詞分類の基準を設定することには困難が伴う。たとえば、英語の形容詞の認定には、比較級・最上級を持つことが基準として用いられることがあるが、日本語には比較級・最上級はないため、これを基準として日本語に形容詞を認めることはできない。 次に、品詞の候補となるある語群がそれだけで独立の品詞を成すのか、それともより大きな品詞の下位範疇にすぎないのかを判断しなくてはならないという問題もある。たとえば、日本語の動詞と形容詞は、いずれも時制などに応じて活用するという形態論的基準を満たすので、1つの品詞にまとめることもできる。しかし、動詞と形容詞は活用に関わる接辞が大きく異なるため、それを重視すると異なる2つの品詞ということになる。 また、動詞と助動詞の中間、名詞と形容詞の中間など、品詞と品詞の境界例となるような語の存在も問題となる。たとえば、「血まみれ」「ひとかど」などは、「血まみれの人」「ひとかどの人物」のように、名詞を修飾する際に助詞「の」を用いる点は他の名詞と共通しているが、「??血まみれが走った」「??ひとかどが来た」のように主語にはなりにくいため、典型的な名詞とは言えない。また、文法化の過程で、品詞と品詞の境界例が生じることもある。文法化は、内容語が機能語に変化するプロセスで、たとえば動詞が側置詞に変化する(日本語の「(〜に)つく」>「〜について」など)。この結果、動詞と側置詞の中間のような存在が生じる。 最後に、品詞は語の分類であることに由来して、何を語として認定するかという点も問題である。たとえば、日本語文法において、山田孝雄は学校文法の助動詞の多くを複語尾とし、語と認定していない。また、松下大三郎は、助詞・助動詞を単語の構成要素(原辞)としている。これに対して、橋本進吉は助詞・助動詞を語の一種であるとする。
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