収束との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 07:17 UTC 版)
定理 絶対収束する実または複素級数は収束する。 これについて、完備性とコーシー列に基づく「コーシーの判定法」による簡明な証明がある: 証明 (an) は実数列とし、∑∞n = 1 |an| は収束するとする。第 k 部分和を sk = ∑kn = 1 an と書くと、自然数 k < l に対し、 | s l − s k | = | ∑ n = k + 1 l a n | ≤ ∑ n = k + 1 l | a n | {\displaystyle |s_{l}-s_{k}|=\left|\sum _{n=k+1}^{l}a_{n}\right|\leq \sum _{n=k+1}^{l}|a_{n}|} である。∑∞n = 1 |an| は収束するから、k, l → ∞ でこの式の右辺は0に収束する。すなわち sk はコーシー列である。従って sk はある点に収束する。 複素数列の場合は、zn = an + ibn とすると、|an| + |bn| ≤ 2|zn| だから実数の場合に帰着できる。(証明終り) 上記の証明ではコーシー列が収束するという完備性とノルムが満たす三角不等式のみが用いられているから、これは完備なノルム空間であるバナッハ空間に対するものに容易に修正できる: 定理 任意のバナッハ空間 (X, ‖ • ‖) において、絶対収束する級数は収束する 証明 X 内の級数 ∑xn が X において絶対収束するとする。部分和 ∑ k = 1 n ‖ x k ‖ {\textstyle \sum _{k=1}^{n}\|x_{k}\|} のなす列は実数からなるコーシー列であり、任意の ε > 0 に対し十分大きな自然数 m > n をとれば | ∑ k = 1 m ‖ x k ‖ − ∑ k = 1 n ‖ x k ‖ | = ∑ k = n + 1 m ‖ x k ‖ < ε {\displaystyle \left|\sum _{k=1}^{m}\|x_{k}\|-\sum _{k=1}^{n}\|x_{k}\|\right|=\sum _{k=n+1}^{m}\|x_{k}\|<\varepsilon } とできる。 ノルム ‖ • ‖ に対する三角不等式から ‖ ∑ k = 1 m x k − ∑ k = 1 n x k ‖ = ‖ ∑ k = n + 1 m x k ‖ ≤ ∑ k = n + 1 m ‖ x k ‖ < ε {\textstyle \left\|\sum _{k=1}^{m}x_{k}-\sum _{k=1}^{n}x_{k}\right\|=\left\|\sum _{k=n+1}^{m}x_{k}\right\|\leq \sum _{k=n+1}^{m}\|x_{k}\|<\varepsilon } が直ちに得られるから、 ∑ k = 1 n x k {\textstyle \sum _{k=1}^{n}x_{k}} は X 内のコーシー列であり、したがって X において収束する。 逆に、絶対収束⇒収束が成り立つノルム空間はノルムの導く距離に関して完備、したがってバナッハ空間となることが示せる。 証明 an は G 上のコーシー列とする。そこで an のある部分列 ank で ‖ ank − ank − 1 ‖ < 2−k となるようなものが取れる。G 上の列 yi を、 y 1 = a n 1 , y i = a n i − a n i − 1 {\displaystyle y_{1}=a_{n_{1}},y_{i}=a_{n_{i}}-a_{n_{i-1}}} と定義する。すると、 ∑ i = 1 ∞ ‖ y i ‖ = ∑ i = 1 ∞ ‖ a n i − a n i − 1 ‖ = ∑ i = 1 ∞ 2 − i < ∞ {\displaystyle \sum _{i=1}^{\infty }\|y_{i}\|=\sum _{i=1}^{\infty }\|a_{n_{i}}-a_{n_{i-1}}\|=\sum _{i=1}^{\infty }2^{-i}<\infty } すなわち ∑ i = 1 ∞ y i {\displaystyle \sum _{i=1}^{\infty }y_{i}} は絶対収束するから、仮定よりある A ∈ G があって ∑ i = 1 ∞ y i {\displaystyle \sum _{i=1}^{\infty }y_{i}} は A に収束する。よって ‖ A − a n k ‖ = ‖ ∑ i = 1 ∞ y i − a n k ‖ = ‖ ∑ i = 1 ∞ y i − ∑ i = 1 k y i ‖ {\displaystyle \|A-a_{n_{k}}\|=\left\|\sum _{i=1}^{\infty }y_{i}-a_{n_{k}}\right\|=\left\|\sum _{i=1}^{\infty }y_{i}-\sum _{i=1}^{k}y_{i}\right\|} = ‖ ∑ i = k + 1 ∞ y i ‖ ≤ ∑ i = k + 1 ∞ ‖ y i ‖ < ∑ i = k + 1 ∞ 2 − i = 2 − k → 0 ( k → ∞ ) {\displaystyle =\left\|\sum _{i=k+1}^{\infty }y_{i}\right\|\leq \sum _{i=k+1}^{\infty }\|y_{i}\|<\sum _{i=k+1}^{\infty }2^{-i}=2^{-k}\to 0(k\to \infty )} すなわち部分列 ank は A に収束する。an は G 上のコーシー列であったから、anも A に収束する。(証明終り) 収束するが絶対収束しないような級数は条件収束すると言う。このような級数の例として交項調和級数がある。級数の収束判定法の多くのもの、例えばダランベールの収束判定法やコーシーの冪根判定法などは、絶対収束性を判定する。それは、実用的に重要な冪級数が収束円の内部で絶対収束するためである。
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