原因と効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 18:44 UTC 版)
細胞内は濃密な環境である。一例として大腸菌細胞は、体長約 2μm、直径約 0.5μm であるから、体積は約 0.6-0.7μm3 の体積を持つにすぎない。しかし、大腸菌は4288種のタンパク質を含み、そのうちの約1000種は容易に検出可能なレベルの濃度で存在している。それに加えて、様々な形態のRNAや染色体DNAも存在しているので、高分子の総合的な濃度は 300-400mg/ml に上る。真核生物の細胞内ではさらに細胞骨格を作るタンパク質フィラメントが込み合っており、この網が細胞質を小路のように分断している。 これら高分子高濃度状態は、細胞体積の大部分で生じている。そして高濃度により、それぞれの高分子の占有体積が縮小される。この排除体積効果により、高分子の影響濃度が増大し、そして反応率を変化させ、反応における平衡定数も変化する。特に、この効果によって、タンパク質のタンパク質複合体の形成や、DNA結合タンパク質のターゲット遺伝子への結合などの、特定の高分子会合が選択され、解離定数が変化する。触媒反応を起こす酵素の形態の変化により、込み合いは高分子だけではなく、小さな分子の反応も変化させる。 込み合い効果の程度は、関わる分子の分子量と形状の両方に依存する。しかし分子量の方がより重要であると考えられている。一般により大きい分子の方がより効果が強くなる。注目すべきなのは、効果の程度は非線形であることで、高分子はアミノ酸や単糖などの小さな分子よりも強くクラウディングの影響を受ける。従って分子クラウディングは、高分子が他の高分子の性質に影響を及ぼす効果であると言える。
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