印刷プロセス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 02:53 UTC 版)
熱溶融型プリンターにおける熱転写印刷は、熱転写印刷専用のプリンターを用い、プリンターに搭載されたプリントヘッドがインクリボンのワックスを溶かすことによって行われる。熱転写印刷のプロセスにおいて用いられる主要なパーツは、固定式のプリントヘッド(これは縦横への移動が不可であるため、印刷する紙と同じ幅のプリントヘッドが必要となり、多色印刷を行う場合はCMYKごとに紙を何度も往復させる必要がある)、インクリボン(インク)、用紙(通常は紙であるが、合成繊維、カード、または生地に印刷する場合もある)の3つである。構造としては、プリントヘッドと紙の間にインクリボンが挟み込まれる形となる。印刷解像度はそれほど高くなく、インクリボンの電気的特性とインクの流動性を正しく考慮し、プリントヘッドの熱を正確に反映するようにしないと、高品質の印刷画像を作成することはできない。 現在一般的に利用されているラベルプリンターにおいては、プリントヘッドの解像度は、203 dpi、300 dpi、600dpiの3種類の物が主に流通している。プリントヘッドに搭載された印刷ドットのそれぞれは個別にアドレス指定が可能で、もし一つのドットが電子的にアドレス指定された場合、事前に設定された温度まで即座に加熱される(設定温度を変更することも可能である)。加熱されたプリントヘッドの「画素(エレメント)」は、インクリボンの紙に面する側に塗布されたインクを即座に溶かし、プリントヘッドのロック機構によって紙がインクリボンに圧着されていることもあって、インクが紙に即座に転写される。ドットが「オフ」になると、プリントヘッドの画素はすぐに冷却され、リボンのその部分は溶融/印刷を停止する。紙がプリンターから出てきた時点では、インクは完全に乾いていて、すぐに使用することができる。 インクリボンに塗布されたインクはワックス系のインクが一般的だが、レジン系のインクや、ワックスとレジンを混合したワックスレジン系のインクもある。ワックス系のインクは溶融温度が低く、転写性が高いが、耐摩耗性・耐熱性などの耐性は低い。レジン系インクはその逆で、転写性は低いが耐性は高い。印刷する対象によって適したインクが違う。 インクリボンはロール状になっており、これをプリンター内の心棒またはリールホルダーにはめ込んで設置する。「使用済み」となったリボンは「未使用」インクリボンのロールの反対側にある巻き取り用の心棒によって巻き取られて行き、最終的に「使用済み」インクリボンのロールが出来上がる。1回印刷するごとにインクリボンを巻き取り、次々と使用済みのリボンが廃棄されて新しいものと交換される、というのが熱溶融型インクリボンの「使い切り」方式である。使用済みのインクリボンを光に当てると、印刷された画像の正確なネガが表示されるのでセキュリティに問題があり、もし機密文書などを印刷した場合は適切に処理しないといけない。「使い切り」方式の熱転写インクリボンを使用した場合、印字するラベルとインクリボンの正しいマッチングを印刷前に行った場合、100%の濃度の印字物が保証されるというメリットがある。ドットマトリックスインパクトプリンターのインクリボンではインクリボンを何周も使い回すため、印刷するたびにインクが徐々に薄くなってしまうのとは対照的である。
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