南極飛行の特殊航法と事前訓練
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 03:30 UTC 版)
「ニュージーランド航空901便エレバス山墜落事故」の記事における「南極飛行の特殊航法と事前訓練」の解説
5人の運航乗務員のうち南極飛行の経験があったのは航空機関士1名のみだった。 出発日の19日前に、未経験のパイロット3名のうち2名に対して南極飛行のための路線訓練(ルート・クオリフィケーション・ブリーフィング)が行われた。この訓練は、専用のビデオ教材とテキストによる教育、そして45分間のシミュレーター訓練で構成された。 飛行経路が磁極に近すぎて磁気コンパスを使用できないため、グリッド航法が用いられていた。グリッド航法とは、自機の位置と方位を特定しにくい空域を飛行するための特殊航法であり、大圏(地球上の最短距離)がほぼ直線で表される地図の上にグリッド(格子)を置き、それを緯線と経線の代わりに用いる技法である。方位も磁方位と関係なく、ニュージーランドから南極へ飛行するときは通常と逆になる北向きが180度となっていた。この航法は、南極飛行を複雑にした要因の1つであった。 乗員をグリッド航法に習熟させることがブリーフィングの目的の1つであった。計器飛行方式 (IFR) による経路や、その際の最低安全高度なども示された。 通常の旅客機の運航では、航空交通の安全確保のため計器飛行方式を利用する場合がほとんどである。計器飛行では、管制官が許可・承認・指示した高度や経路を飛行するため、視界が良くても悪くてもパイロットは概ね同じように操縦する。しかしTE901便は南極観光飛行であり、乗客に目的地を見せて楽しんでもらうことが求められた。 有視界飛行方式 (VFR; Visual Flight Rule) とは、視程が規定値以上あり雲からも一定以上の距離を置いてパイロットが目視で安全を確認しながら飛行する方式である。ブリーフィングにて有視界飛行の条件も説明されたほか、シミュレーター飛行ではマクマード上空で有視界飛行方式により降下する訓練も行われた。
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