半世紀後の開封と実食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 02:02 UTC 版)
食品が詰められることがなかった空の容器が多く残っていることもあり、未開封の現物が見つかるまで、缶詰や瓶詰のような密閉状態は長く保たれにくく、ふたが自然に外れてしまうなど貯蔵容器としては機能的な疑問があったと思われていたが、1993年(平成5年)9月、日本缶詰協会の研究所で1944年(昭和19年)製の未開封の防衛食が開封された。未開封品は1944年当時、神奈川県横浜市の神奈川食品の研究室が作った試作品のひとつで、神奈川県農業総合研究所に保管されていた。 開封に際しては、ふたと容器の間の天然ゴムが完全に固着していたため、刃物で切り離した。総重量は613グラムで内容重量は293グラムだった。計測された真空度は25cmHgと非常に高く、製造時の真空度は不明であるものの高い密封性を保持しており、半世紀近くが経過したとは思えない状態の食品が保存されていた。内容物は大豆、ニシン、昆布の醤油味付けで、実際に食することができ、著しい変色もなく、煮崩れもなく、原料のひとつである身欠きニシンには発酵臭があり非常に塩辛かったが、全体的には味には異常はなかった。また、内容物の上には透明なセロファンがかぶせられており、開封の際に陶器片が混入しないようにするためのものと思われる。このセロファンはカニ缶の中でカニを包んでいるパーチメント紙と同様のものであった。日本缶詰協会は「常温で半世紀にわたって貯蔵されていた容器が、内容物の品質を保持し続けていたことは驚異的である」と結論づけ、その開封にあたって官能評価と内容物の分析を行い、保存性を実証するデータとした。
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