医療過誤での刑事責任追及の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 06:37 UTC 版)
「業務上過失致死傷罪」の記事における「医療過誤での刑事責任追及の問題点」の解説
「死因究明」も参照 医療過誤で、患者が死亡した事例に対して「自動車事故のように、単純に業務上過失致死傷罪に問うべきではない」との批判が、医師など医療従事者や一部の法曹から出ている。その論旨は、以下のようなものである。 医療訴訟は、個人責任追及が主眼となりがちで、事故調査機関での例と同様に、真実の追求を妨げられ、医療機関や医療制度そのものの問題点の分析が疎かとなり、医療の安全性向上への取組みや、実効的な改善施策の継続がなおざりになる。 ジャーナリストの藤代裕之は、医療過誤が発生すると報道機関は社会部が中心となって取材をするが、取材対象は、主に被害者・警察・検察であり、医師に対しては「人命第一」「社会的責任」といったバイアスがかかることなどから、記事は被害者寄りの情緒的な物になりがちだと指摘している。 このことが、警察や検察に無理な捜査を強いているのではないかという意見がある。したがって、単純ミスを引き起こした背後要因の改善が期待できず、いくら特定の医療従事者個人の責任を追及し厳罰に処しても、ヒューマンエラーは減少しないとの指摘がある。 一方で、東京地方検察庁で薬害エイズ事件の刑事裁判を担当し、医療事故の捜査に詳しい検事の青沼隆之は「医療事故は非常に立証が難しいが、事故が起きた時の原因や責任を追及する体制が整っていない現状で、悪質な過誤やカルテの改竄を前に、検察庁が手をこまねいている訳には行かない」と述べている。
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