初期の大きな太陽質量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/06 16:50 UTC 版)
「暗い太陽のパラドックス」の記事における「初期の大きな太陽質量」の解説
上記の説は、地球大気の温室効果や地熱の影響など、暗い太陽のパラドックスの原因を地球の大気や内部に求めるものであった。これは標準太陽モデルが非常に良く検証されたモデルであり、太陽の光度進化を変更するのは容易ではないと考えられてきたからである。しかし最近ではパラドックスの原因を太陽に求め、太陽の進化過程を見直すことで解決を試みる仮説も提唱されている。すなわち、過去の太陽は暗くなかったという考え方である。 恒星の質量が大きいほど光度も強くなるため、初期の太陽の質量が大きかった場合は太陽光度も強く、従って地球の海も完全な凍結を免れることが出来たと考えられる。初期の地球が凍結を起こさないためには,形成直後の太陽の質量が現在よりも 5% 程度重ければ充分であるとされる。太陽が形成されてから10億年程度かけて太陽風によって質量を放出して現在の太陽質量になった場合、太古代の地球の海は凍結せず、かつ現在の太陽質量を説明することが出来る。これが実現されるためには太陽風による質量の減少が大きい必要があるが、現在の太陽風による質量放出率は質量の減少に必要な量の300分の1から1000分の1程度と遥かに小さいという問題点がある。しかし若い太陽型星のライマンα線での観測では、若い太陽型星の恒星風による質量放出率は現在の太陽の100倍程度になる場合もあるという報告もあるため、過去の太陽風が非常に強かった場合はこの仮説でパラドックスが説明できる可能性がある。 しかし隕石や月面のサンプルへの太陽風イオンの注入の記録からは、太陽風の流束が上昇した時期が継続したのは1億年程度でしかないだろうという結果が得られている。若い太陽型星であるおおぐま座π1星の観測による恒星風の減少の傾向はこの結果と一致しており、過去の太陽風による質量放出が大きかったということだけではパラドックスを解決できない可能性を示唆している。
※この「初期の大きな太陽質量」の解説は、「暗い太陽のパラドックス」の解説の一部です。
「初期の大きな太陽質量」を含む「暗い太陽のパラドックス」の記事については、「暗い太陽のパラドックス」の概要を参照ください。
- 初期の大きな太陽質量のページへのリンク