切稜立方体の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 01:50 UTC 版)
紀元前5-6世紀の中国(漢代)において、「六博(りくはく)」と呼ばれた盤上遊戯のさいころとして18面体の木製立体が使われていたことが明らかにされている。これは切稜立方体の六角形が三枚集まる頂点を丸めたものである。 2006年に、山口県の木材加工会社に勤務していた中川宏が偶然に製作した18面体の名称が不明であったことから、「切稜立方体」(英訳Chamfered cube)と呼称することを提唱。当初の18面体は、内接球を持つ切稜立方体であることが、共同研究者の佐藤郁郎によって明らかにされた。 1996年9月、炭素結晶フラーレンの構造に関する論文において、chamfered cubeが十二面体と菱形十二面体とを橋渡しするゾーン多面体として言及された。 2011年1月、Wikipedia 英語版のConway polyhedral notation の項目に、Conway オリジナルの11の多面体変形操作に加えて、chamfer とGeorge W. Hartのpropellor とRefrect の3つの操作が書き込まれた。 ただし、そこには紆余曲折があった。当初は、chamfer はbevel というConway オリジナルの操作と同一視されていた。bevelとは例としては立方体を大菱形立方八面体に変形する操作とされてきたもの。立方体を元の立体として、まずambo という辺の中点を頂点に取り換える操作をほどこして立方八面体とし、そのすべての頂点をtruncate(切頂)したもの(taC=bC)とされてきた。しかし実際はこの操作によって作られる面は正方形ではなく長方形であり、大菱形立方八面体ではない。正しくは切稜(削辺)と切頂の組み合わせによらなければ大菱形立方八面体はできない。ところがtruncate によって作られる面が、立方体を直接chamfer(切稜)することによって作られる面と重なることから混同されてしまったらしい。 ほどなく誤解は解かれて、bevelからchamfer は区別された。2014年8月には、Chamfer(geometry)というタイトルが別に立てられ、立方体に切稜操作を施したものがChamfered cube(cC)と名付けられた。 しかしその内容は、元の立体の頂点をそのままに、面だけを外側に離し、隙間を六角形面で埋めるというものであった。 2017年にはつぎの大きな再編成が試みられて、元の立体のedge を保存するloft とよばれる操作がchamfer に似て非なる操作として新設され、のちにchamfer はloft の特別な場合とみなされるようになって今日に至る。loft とは例えば立方体の各面に四角錐台を貼り付けるような操作で、隣り合う面に貼り付けられた角錐台の2側面が1平面となる場合がchamfer だということのようだ。 いずれにしろ、Wikipedia 英語版は、元の立体から辺に平行な平面によってその一部を切り離すこととはとらえずに、逆に元の立体の面を浮き上がらせる操作として切稜(chamfer)を位置づけようとしてきたといえる。
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